氷上で煌めく太陽 (ページ32)

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３０話ページ32

あ、知子ちゃん４位か。

ロシアの選手強いなー。
私も負けてらんない。

……負けてらんない。

……。

私はなんでここにいるんだろう。

本当なら、みんなと一緒にベラルーシで戦ってたはずなのに。

擦り傷とアザだらけの脚。
がっちり固定された足首と肩。

ほっぺたにも、四角い大きな絆創膏がひとつ貼られている。

｢はあー……｣

ため息しか出ない。

それと同時に、あのときの恐怖と犯人への怒りがこみ上げてくる。

世界ジュニアに出られないとわかった時、絶望しかなかった。

全日本選手権で自分の力を試して、手応えがあって。
この勢いで、シニア転向前の最後の選手権で、表彰台の一番高いところにあがるんだって思ってた。

それをどこの誰だか分からないやつにめちゃくちゃにされた。

この行き場のない感情をどうしたらいいのか分からなくて悶々としていた時、ふと最近よく連絡を取り合ってた佳菜子ちゃんに電話しようと思い立った。

何も知らない佳菜子ちゃんは、いつもの元気で明るい佳菜子ちゃんで。
それだけでなんだかホッとした。

佳菜子ちゃんに世界ジュニアに出られなくなったことを伝えると、電話の向こうで号泣しているのがわかった。
いつも底抜けに明るい佳菜子ちゃんがあんまり泣くものだから、私の涙はどっかにいっちゃったよ(笑)

しまいには｢カナがそいつぶっ飛ばしてやるから！｣なんて物騒なことを言うものだから、全力でお断りしておいた。

最後に佳菜子ちゃんは、｢来月の世界選手権、カナがAちゃんのぶんまで頑張ってくるから！カナだけじゃないよ！あっこちゃんも真央ちゃんも！なんなら男子だって巻き込むし！｣と力強く言ってくれて、ああ、佳菜子ちゃんに電話してよかったって思った。

安静が解けたのは３月のはじめ。
そこからは肩の可動域を広げる訓練を受けたり、脱臼を繰り返さないようにするための筋トレをしていた。

スケートができない今、自分ができることをコツコツとやるしかない。

焦ったらだめ。

表彰台の一番高いところを目指すなら、今は我慢のときなんだ。
いつかきっと、この時間がプラスになるときがくるって信じてる。