28話【結弦side】《2012年 世界選手権》 ページ30
佳菜子「Aちゃん、暴漢に襲われて怪我したんだって。怖いよねぇ〜」
結弦「……は?」
世界選手権に出場するためにやってきたフランスで、時差調整のために大ちゃん・俺・こづくん・カナ・真央ちゃん・明子さんで集まって話をしてた時だった。
カナが「そういえばさあ……」とさっきのようなとんでもない爆弾を投下してきた。
俺以外にも、このことを知らなかったみんなは同じ反応。
佳菜子「だからぁ〜、ぼ・う・か・ん!Aちゃん可愛いからなあー」
いや、そんな軽いトーンで言うような話じゃねーだろ。
大輔「いつ?どこで?」
明子「暴漢って……Aちゃん大丈夫なの?」
真央「棄権しなきゃいけないほどの怪我したの?」
崇彦「カナはAちゃん本人から聞いたの?」
なんとまあ、俺が知りたかったことを、ここにいるみんなが全部聞いてくれた。
佳菜子「カナはAちゃんと親友だからね!Aちゃんが電話してきたの!」
結弦「親友ってほど長いつきあいじゃないでしょ」
佳菜子「うるっさいなあ、ゆづは。いいの!Aちゃんはカナを頼ってくれたんだから!」
大輔「で?Aちゃんはなんて?」
大ちゃんがそう聞くと、カナは少し声のトーンを落として話し始めた。
佳菜子「Aちゃんから電話がきたのはバレンタインが終わってちょっとしてからだったかなー?Aちゃん、元気なくってさあ。カナ、Aちゃんにどうしたの?って聞いたの」
佳菜子「そしたら、『世界ジュニア、出れなくなっちゃった』って言ってきてさ」
佳菜子「なんで?って聞いたら、怪我しちゃった……って。最初は練習中に怪我したのかと思ったんだけどね。だからカナも、スケートやってると怪我ってよくあるよね〜って返したんだけど」
いつもなら明るく話すカナが、下を向いて暗い顔で話を続ける。
その様子に、その場にいるみんなも誰一人ふざけてるやつはいなかった。
佳菜子「学校帰りに、知らない人に後ろから抱きつかれたって。で、抵抗したときにバランス崩して、歩道橋の階段から落ちたってさ」
階段から落ちたって聞いた瞬間、みんな言葉を失った。
しばらくして、口を開いたのは大ちゃんだった。
355人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:優里奈 | 作成日時:2021年4月13日 22時