氷上で煌めく太陽 (ページ25)

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２４話ページ25

｢……。A、｣

遠くで名前を呼ばれている気がして、意識がゆっくりと浮上する。

視界に入ってきたのは白い天井と、学校の保健室によくあるような白いカーテン。
でもここは学校の保健室じゃない。
どこだっけ、ここ……。

｢ん……｣

頭がズキン、と痛んで思わず声が漏れると、｢A？｣と聞き慣れた声。

｢おかあさん……｣

母｢大丈夫？過呼吸で倒れたって聞いてびっくりしたよ｣

｢あー……｣

母｢まだ具合悪い？｣

｢ちょっと、頭が痛いかな。でも大丈夫、起きれるよ｣

ゆっくりと体を起こすと、お母さんが背中を支えて体勢を直してくれた。

母｢医務室の先生がね、呼吸も落ち着いてるから、目が覚めたら帰ってもいいって。Aの荷物はスタッフの方が持ってきてくれたから｣

そこへコンコン、とノックをして入ってきたのはコーチだった。

コーチ｢A、大丈夫？体調はどう？｣

｢ちょっと頭が痛いけど、大丈夫です。歩けるくらいには｣

コーチ｢それなら良かった。演技の後に泣いてたから、ちょっと気になってたのよ。そしたら過呼吸で医務室だって言うんだもの｣

｢ごめんなさい｣

コーチ｢あの曲は特別な想いがあるって言ってたもの。Aが後悔してないならそれでいいのよ。でも入れ込みすぎるのも危険って今日わかったわ。まずはゆっくり休んで。年明けからまた練習だからね？｣

｢はい。ありがとうございました｣

じゃあ、とコーチは私達に礼をして、医務室から出ていった。
私も帰り支度をして、お母さんと一緒に宿泊先のホテルへ戻った。

あー、みんなと写真撮りたかったな。
せっかく初めてシニアの大会に出られたのに。

雲の上の存在だと思っていた真央ちゃんや高橋選手と仲良くなれて、夢のような時間だった。

今思えば、全て夢だったんじゃないかなって思う。

でも夢じゃないと思いたくて、かばんから携帯電話を取り出した。
練習の合間に、真央ちゃんと佳菜子ちゃんと連絡先を交換したはず。

携帯電話の電話帳を見ると、そこにはしっかりと真央ちゃんと佳菜子ちゃんの連絡先が。

｢夢じゃなかった……｣

佳菜子ちゃんからはメールが来ていて、過呼吸のことを心配してくれていた。
大丈夫だよ、と返信してベッドにダイブ。

目を閉じて眠ろうとするけど、いまだに興奮してるのかなかなか寝付けなかった。