氷上で煌めく太陽 (ページ24)

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２３話【結弦side】ページ24

加賀美さんは本当に14歳なんだろうか？

エキシビジョンの演目の話をしたとき、選曲の理由を語った彼女の表情はとても中学生には見えなかった。

それどころか、俺よりも大人びた顔で……友人の死を語った。

震災を目の当たりにした俺もそれなりにしんどくて、いまだに恐怖が蘇ることもあるのに。

大切な人を失った事実を、会いたくても会えないという現実を受け入れた彼女は俺よりずっと大人に見えた。

辛い事実に、前向きに向き合っていこうとしている加賀美さんを見て、自然と涙が頬を伝った。

そんな俺を見た加賀美さんは｢本番前なのに｣すごく焦ってたけど、そんなのどうだっていい……わけないけど、これくらいどうってことない。

｢苦しかったよね……｣

そう言って無意識に彼女の頭を撫でていた。
さっきまで慌ていた彼女の目にはじわりと涙が溜まってきて。

でも涙は見せたくないのかな。
フイ、と俺に背を向けて深く息を吐いた。

それからまもなく、加賀美さんは本番を迎えた。

リンクを舞う姿は、さっきの涙なんて無かったかのように華麗で、でも力強かった。
友達を思う彼女の表情は切なさが溢れていて、見ているこっちまで苦しくなりそうだった。

スケートの技術もすごいのに、人を引きつける表現力もこんなに持ち合わせてるなんて。

彼女はこれから、もっと世界を相手に戦うスケーターになると確信した。

彼女の演技が終わっても、しばらく彼女から目が離せなかった。
コーチから｢なにボーッとしてるの。出番だよ｣と言われて、ハッと我に返る。

そうだった。

加賀美さんのあとは、俺の出番。
リンクサイドに戻ってくる彼女と入れ替わるように、ゆっくりとリンクに乗った。

あんな演技を見たら、声をかけずにはいられなかった。

いろいろ話したかったけど、今はその時じゃない気がして。

｢最高だったよ、おつかれ｣

今にも泣き出しそうだった彼女の頭を、ポンと軽く叩いて労った。

俺も彼女に負けない演技をしよう。

辛かったとき、支えてくれた人たちへ感謝を込めて。
そして今もまだ、大変な思いをしている被災地のみんなへのエールを込めて。