１２話【結弦side】《2011年全日本選手権 男子FS・女子SP》 ページ13
フリーの出番が迫ってきて、緊張感が高まってくる。
いつものようにイヤホンをして音楽を聞きながら、リラックスしつつ集中力を高めていく。
先に出番を終えた昌磨が、リンクから引き上げて戻ってきた。
あの様子だと、不完全燃焼で終わった感じかな？
イヤホンを片方だけ外して、歩いてくる昌磨に向けて拳を軽く突き出した。
結弦｢おつかれ｣
昌磨｢うん。ゆづくんも頑張ってね｣
結弦｢うん。がんばる｣
短くそう言葉を交わして、昌磨は俺が出した拳にコツン、と自分の拳をあてた。
ーーーーーーーー
《羽生結弦、フリーで首位に立ちました！》
完璧とはいかないけど、ノーミスでフリーは1位になった。
総合はなんとか3位に入って、初めての世界選手権出場権を獲得した。
《羽生結弦選手です。まずは総合3位、おめでとうございます》
結弦｢ありがとうございます｣
《フリーの演技、素晴らしかったです。終えてみていかがですか？》
｢そうですね……まだまだだなって思いましたね。でもこれが今の自分の100%だったので、もっと練習して、世界選手権では上に行けるようにがんばります｣
このほかにもいくつかインタビューに答えて、控え室に戻った。
靴を脱いで着替えを済ませた頃、コンコン、とノックをして入ってきたのは昌磨だった。
昌磨｢おつかれさま、です。ゆづくん3位おめでと｣
結弦｢ありがと。昌磨も頑張ったよ｣
昌磨｢僕は……頑張ったなんて言える成績じゃなかったから｣
そう言って苦笑いする昌磨がなんだか可愛くて、
｢全力でやったんだから、昌磨も頑張ったんだよ！｣
と言って頭をクシャッと撫でた。
やめてよ、なんて言うけど、嫌がらないで受け入れてくれるのが昌磨の可愛いところ。
昌磨｢ゆづくん、女子の結果聞いた？｣
結弦｢いや、まだ知らないけど｣
昌磨｢加賀美さん、6位だって｣
結弦｢ほんと？最終グループじゃん。すごいすごい！｣
初めてのシニア大会で上位にくい込むなんて、やっぱ彼女は凄いや。
結弦｢明日の女子フリー、一緒に見ようよ｣
昌磨｢いいの？｣
結弦｢いいもなにも、一緒に加賀美さんの演技見ようよ｣
昌磨｢4回転跳ぶかな？｣
結弦｢たぶんね。抽選会の時やるって言ってたし｣
昌磨｢ゆづくん、加賀美さんと話したの？｣
結弦｢ちょっとだけね｣
昌磨｢ゆづくん、そういうとこ手が早いよね｣
結弦｢どういう意味だよ(笑)｣
女たらしみたいに言うな、と昌磨の頭をペチンと叩いた。
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作者名：優里奈 | 作成日時：2021年4月13日 22時
