氷上で煌めく太陽 (ページ11)

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１０話《2011年全日本選手権男子 SP》ページ11

男子シングルの試合は、コーチと一緒に観覧席で応援した。

シニアの試合を生で見るのは初めて。

自分の試合より緊張してるかもしれない。

コーチ｢なんでAが緊張してるの(笑)｣

｢だって！羽生くんの演技が生で見られるんだよ？どんな滑りをするのかなーとか、ジャンプ失敗しないよね？とか、色々考えちゃって｣

コーチ｢自分の心配するならまだしも、そんなのAが心配することじゃないでしょ｣

リンクに立ってるときは全く緊張しないのに、変なところで緊張するのね、とコーチは呆れたように笑った。

試合は順調に進み、最終滑走の羽生くんの番がきた。

リンクサイドでコーチとやり取りしている羽生くんの姿が見える。

緊張してるのかな？
表情が硬い気がする……。

昨日、話しかけてくれたときのような穏やかさは全く感じられなくて、それは試合だから当然なんだけど……
それでも見ていて大丈夫かな？と思う表情をしてた。

青い衣装を着た羽生くんが、リンク中央で構えて演技に入る。

やっぱり緊張してたのかな……

ジャンプで着氷が乱れてしまった。

それでも、そのあとのトリプルアクセルは流石というか……

それ以外の部分でも、羽生くんのスケートは目が離せなかった。

きれい。
芸術みたい。

指先の動きまで美しくて、年齢は私と３つしか違わないのに、こんなにレベルの高い演技ができるんだ……と感動してしまった。

演技後の羽生くんは悔しそうな顔で、自分の滑りに納得がいっていないようだった。

結果は４位。
ショートプログラム１位は、高橋大輔さんだった。
これも経験の差なのかな。

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【結弦side】

緊張が演技にも出てしまった。

ジャンプが上手くはまらなくて、到底納得のいく演技にはならなかった。

明日のフリーで巻き返すしかない。

演技が終わって客席に向かって礼をしてるとき、加賀美さんが座ってるのが見えた。
その表情からはどんなことを考えてるか分からなかったけど、俺、大したことないって思われちゃったかな？

完璧に決めたかったな。

そういや、明日は俺らのフリーの前に女子のショートだっけ。

加賀美さんの演技も見たかったけど、今は自分のことに集中しなきゃ。

明後日の女子フリーは絶対に見る。
彼女のジャンプがどんなものか、この目で見るんだ。