1話 ページ2
真っ白な舞台で綺麗な青い衣装を身にまとって舞うその姿は、フィギュアスケートに興味のなかった私にも強烈な印象を与えた。
とにかくきれい。
かっこいい。
演技が終わるまで、その人の演技から目が離せなかった。
《荒川静香、金メダル獲得……!》
2006年2月。
加賀美A、8歳。小学2年の冬だった。
私はこの人のスケートがきっかけでフィギュアスケートを始めた。
ーーーーーーーーー
2009年3月。
スケートを始めて3年が経った頃。
いつもの練習場。
いつもの練習メンバー。
いつもの時間にリンクに入って、ウォーミングアップがてらリンクを1周した。
いつもとちょっと違っていたのは、練習に来た女の子たちが数人、リンクサイドで何やらキャーキャー言いながら盛り上がっていたこと。
恋バナでもしてんのかなー?なんて思いながらリンクサイドに戻ると、私に気づいたカンナちゃんから話しかけられた。
カンナ「ねえAちゃん!これ見てよ!」
「えー?なに?動画?」
カンナちゃんが見せてきたのは、誰かがスケートを滑っている動画。
「誰これ」
カンナ「Aちゃん知らないの〜!?羽生結弦くんだよ!ジュニアの!お姉ちゃんが撮って送ってくれたの!」
「へぇ……」
そういや、カンナちゃんのお姉ちゃんはジュニアの選手だっけ。
カンナ「羽生くんてね、ノービスの時からめちゃくちゃ上手なんだよ!私も羽生くんみたいになりたいなあ〜」
そう言いながらうっとりとした顔で画面を見るカンナちゃん。
「でもこの人、男の子でしょ?カンナちゃんは女の子なんだから、男子みたいになるのは難しいんじゃないの〜?」
つい思ったことをストレートに言っちゃうところが私の悪いクセ。
ほっぺたを膨らませてプリプリ怒り出したカンナちゃん。
でもどうしてもその「羽生くん」という人の魅力を伝えたいのか、私に動画を見せながら熱く語り出した。
カンナ「羽生くんはそこらの男子とは違うの!まるで女の子みたいにキレイな動きをするんだから!Aちゃんもぜーったい見た方がいいよ!っていうか見て!」
そんな形で見せられた、羽生くんとやらの動画。
「……カンナちゃん、ごめん!さっき言ったこと取り消す」
羽生くんの魅力、わかったでしょ?なんて嬉しそうに言うカンナちゃんの言葉は耳に入ってこない。
私は、「羽生くん」という人の演技に一瞬で魅了された。
目標とする人が、彼に変わった瞬間だった。
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年4月13日 22時