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「いやぁ、いい反応してくれて嬉しいよ」
「しょうもな〜」
エイプリルフール、だ。もうそんな時期だったのか。とても期限が良さそうなまふはけらけらと笑いながら私の頭をわしわしと撫でている。くそ、悔しい。綺麗に引っ掛かってしまった。ちょっと本気で心配したのに、このクソガキめ。
朝から元気そうなこいつとは裏腹に叩き起こされた私は少しムッとしていた。このいたずら坊主に今更本気でキレることはないけど、それでもいいように騙されたことへの悔しさはある。しかもあんな五秒で考えたような嘘に。
ひとしきり笑い転げてから、目に涙を浮かべて満足したらしい彼は再びベッドに横になった。満ち足りた気持ちで二度寝をしようってのか、どうしようもないな。何を勝ち逃げしようとしているんだ。許せるわけがないだろう。
どうしてやろうかと思案する。嘘にはやはり嘘で返すべきだろうか。でも今騙されたばかりの私の発言を、彼が警戒していないわけがない。生半可なことを言ってもすぐに見破られるのがオチだ。
「もう、ごめんって。ほらおいで」
上体を起こしたまま何かを企んでいる私に危険を察知したのか、寝転がった隣のシーツをぽんぽんと叩いて私も二度寝を促された。それに半分従うように、でも半分反抗するように、彼の顔の横に手をついて、耳元に唇を寄せる。結局のところ、こいつに効くのはこれが一番だろう。
「……まふ」
「なぁに？」
「好きだよ」
へ、と上擦った吐息がそばで漏れたのが聴こえた。まあ、日頃から頻繁に囁いているわけでもないから。まふは一瞬顔を綻ばせて、すぐに怪訝そうな顔をして、それから眉を下げて間抜けに口をぽかんと開けた。
「ど、どっちの意味！？」
「朝ごはん食べてこよ」
「ちょっと待って、ねぇ、A！？」
軽やかにベッドから降り立ってキッチンへと向かう。後ろから何か聴こえる気がするけど全部無視。とてとてと覚束ない足取りでついて来ては「それは嘘じゃないよね？」「お、怒ってる？」と上目遣いをしてくる彼に「さぁね」と曖昧に返す。焦っている姿を見るのは正直気持ちいい。
まぁ、先に仕掛けてきたのは向こうだし。それにしても、こんなに狼狽えるんだ。彼の感情が垣間見えて気を良くしながら、普段は気安く言えない気持ちに背中を押してくれた今日という日に、ちょっとだけ感謝した。
必ずしも嘘をつかなきゃいけないわけじゃないもんね。
エンディングを繋ぐ【mfmf】→←嘘から誠、身から錆【mfmf】
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作者名：こより | 作成日時：2023年3月1日 21時
