嘘から誠、身から錆【mfmf】 ページ4
「どうしよう、起きて……」
揺り動かされて目が覚めた。起き抜けの頭は全く働いてはいないが、私を起こした声の主がどうやら焦った様子であることは受け取れた。しょぼしょぼした目を一度ぎゅうと閉じてから、揺れる瞳と目を合わせる。
「どうしたの……」
時計を確認するより先に手を伸ばす。彼は起きてから少し時間が経っているのか、頬の表面が少しつめたかった。
私の問いに対して少し目を泳がせたあと、また「どうしよう」を繰り返すばかりで要領を得ない。なんなんだ、一体。
「具体的に話しなさい。どうしたの」
「いや、あの、ちょっとツイッター確認してほしい、大変なことになってるから……」
「ツイッター？」
充電ケーブルを引っ張って画面を点けると、流し目の飼い猫と共に表示された時刻は午前七時。なんでこんな早起きしなきゃいけないんだ。大変なことって何だ、まさか炎上？ 少しずつ活性化してきた脳が背筋に冷や汗を流す。
緊張しながらもアプリを開いて「まふまふ」の名前で検索をかける。番組出演の告知、楽曲、これは杞憂民、ファンアート……見たところ特におかしな点はない。彼の顔に視線を戻す。まっすぐに私を見ていた。
「なんもないんだけど」
「なんもないからね」
「は？」
どういうこと、と続けるより先に「あはははは！」と笑い始めた。大丈夫か、こいつ。怪訝な顔をして頭を回していると、スマホの画面を向けられた。違う角度の猫の画像、とんとんと指さしたのは時計の少し上、今日の日付は、四月一日。
「……ああ〜」
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作者名：こより | 作成日時：2023年3月1日 21時
