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「そらるさん」
「なんだよ。念の為病院行くか？」
「やだ。大丈夫ですよぉ、元気なんで」
「どうだか」
「……そらるさん、だったか〜」
「なんだよお前、本当に大丈夫か？」
いいえ。ほら、痒いところに手が届くというか。盲点にあって思い出せないものを思い出せた時って、すっきりするじゃないですか。と言い訳を並べたら「は？ オレのこと忘れてたってこと？」と言われてまた別のピンチに直面した。そういうわけでは。
そらるさん、天月くん、うらたさん、坂田。それから、まふまふ。うん、ちゃんと思い出せる。あと、
「＿＿＿」
「……え、誰？」
「や、ちょっと色々あって」
「マジで何？ こわ……」
「はァ？ 怖がることないでしょう！」
「怖いわ……」
高校の頃、夏休み明けにクラスメイトが一人減った。
まだ残暑で蒸した中、集合した全員が長袖のシャツとジャケットを着て、汗を浮かべたり涙を流したりしていた。綺麗に化粧をされて箱に入った彼女は目を閉じたまま動かなかった。
いちクラスメイトでしかなかったボクは参列をしただけで、死因を聞くほど踏み込めなかった。事故だったり自 殺だったりといろんな噂が流れたが、正確な情報は誰も知らなかった。
こんな夢を見た。いや、あれは本当に夢だったのだろうか。真相はきっと、百年経たないとわからない。
夏が終わる。彼女はまだ、八月に取り残されたまま。
続く
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作者名：こより | 作成日時：2023年3月1日 21時
