ことばよりも【短編集】 (ページ11)

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毒善【mfmf】ページ11

(アイドルパロ、「きみだけに届けたいドルチェ」と同世界線です。本編より先に番外編を書いてすみません。うっかり)

☆登場人物補足情報☆

〇まふまふ
男性デュオアイドル「After the Rain」の片割れ。Aとは学生時代からの友人で、長らく片思いをしている。

〇そらる
男性デュオアイドル「After the Rain」の片割れ。Aのことはまふまふから聞いた話以上は知らない。

〇A
AtRのファンで「まふくん」推しのめんどくさいオタク。推しと友人が同一人物であることは事実としては知っているが認めたことは無い。

＊

　先日送った「今週どっかでごはん行こ」のメッセージに、「次回公演決定我労働激多忙」とニュアンスでしか伝わらない返事が来ていた。あぁ、昨日告知したやつか。

　ありがたいことに、ボクたちのユニットもアリーナツアーが決まった。今回は三都市で合計五公演もステージに立たせてもらえる。決まった日はそらるさんと一緒にちょっと贅沢なごはんを食べた。

　それに喜んでくれたのは、ファンの皆も同様だったようで。昨晩からエゴサをする度に増える「おめでとう！」のツイートに何度も励まされた。ああ、自分たちはこんなにたくさんの人に愛されているのだと。

　きっと彼女も喜んでくれると思って、会う予定を立てようとしたらこれだ。いや、嬉しい。勿論飛び上がるほど嬉しい。それはもう来るつもりだということだから。でも一日も空いてないと言われるとちょっとへこんだ。ボクを大事にしている彼女は、ボクを大事にしていない。なぞなぞのようになってしまったけれど、本当のことだ。

　こうなったらリハを完璧にこなして、当日は最高以上のパフォーマンスを見せてやる。それから一週間、ボクは毎日早くから遅くまでスタジオに籠り、体調管理を万全に整え、容姿も崩れがないように磨き続けた。

　彼女のためだけじゃない。そうやってボク達に会いに来るために、自分の時間を消費して、努力してくれるファンがたくさんいるのだと今一度意識することができたから。それに最大限応えることが、ボク達の責務だ。……それとは別に、ほんのちょっとだけでも、彼女がボクに惚れ直してくれたらいいんだけど。

　そうして本番を二週間も切った日、ちょうど数少ないオフが重なったボクは、チケット戦争のために一日休みを取っていたAの家に久しぶりに足を運ぶことになったわけだが。