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15分ぐらい歩くとポツンと赤い屋根のパン屋があるのがわかった。
「こんちは。」
「こんにちは、。」
「おお、2日連続で来るなんて珍しいな。」
出迎えてくれたのはガタイのいいおじいさんだった。
「おい、その子は?」
「弟子。」
「は?何言ってんだ、テヒョン。」
「世の中で生き抜くための術を教えてあげてる。だから、弟子と師匠の関係なんだ。」
「よくわかんねぇけど、そういうことなのか?お嬢ちゃん。」
「あ、はい。わたしからお願いしたんです。」
今は話を合わせることにした。
「ふーん、で。今日は何の用だ?今日はタダ飯くわしてやらねぇぞ。」
「分かってる。とりあえず食パン一斤くれ。」
「それだけか?」
「金がないことは分かってるだろ。」
おじいさん相手だとすこし口調が強くなるテヒョンさん。
こっちが素顔なのかも。
食パンを受け取り店を後にする。
「ね?無愛想でしょ?」
「でも、優しそうでしたよ?」
「まあね、優しいとこもあるんだけど。」
「仲良くなりたいな、」
「なれるよ、Aなら。」
帰り道、テヒョンさんはスクラップ工場の前で立ち止まった。
「ちょっと待ってて。」
それだけ言い残して中の事務所に入って行った。
少しして戻ってきたと思ったら手には小型のテレビを持っていた。
「どうしたんですか?それ。」
「ここのおじさんと友達なんだ。テレビがきたら連絡してって言ってあって昨日連絡がきたからさ。」
「そうだったんですね。」
「一応誘拐犯だからさ。ニュースは見ておかなきゃでしょ?」
あまりにも軽く言うから笑ってしまった。
「ですね笑」
「やっと笑ってくれた。」
「え?」
「今まで全然笑わなかったからさ。もしかしたら誘拐しない方が良かったんじゃないかって心配だった。」
「すいません、」
「謝らないでよ。Aは悪くないから。」
笑い方なんて忘れてた。
作り笑いならいくらでもできるけれど。
でもさっきのは自然に出た笑顔だった。
テヒョンさんとなら笑顔で居られるかもしれない。
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作者名:vivi | 作成日時:2019年3月21日 22時