3話、かも ページ4
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｢ん。｣
そう言って白瀬さんが渡して来たのは、パピコの片割れだ。｢あ、お金……｣と言うと、｢いらない｣と断られる。
あれから僕は、つられるがままコンビニへ行って、パピコを一つだけ買って、その足で公園に来た。
着いたそばから白瀬さんが一目散にブランコに座るものだから、僕も慌てて並んで腰をかける。
｢おいしい？｣
｢うん、……おいしいよ。｣
そういうと白瀬さんは満足気に目を細めた、気がした。表情があまり変わってないから……、
｢ねぇ、なんであそこにいたの。｣
しばらく僕達は無言でパピコをちゅーちゅー吸っていて、先に食べ終わった白瀬さんが言った。
｢……。僕はここの学生だし、学校にいるのは普通だと思うけど、｣
｢私の言い方が悪かった。｣
｢どうして、休日の、誰もいない学校の屋上にいたの｣
全てを見透かしたような、どこか確信めいた口調だった。
そんな時よぎったのは、先日かっちゃんに言われた"屋上からのワンチャンダイブ"。別にかっちゃんにやれって言われたからきていたわけじゃないけれど、｢ほんとに飛んだら個性も発現するかな｣なんて、ほとんど冗談みたいな自傷的な気持ちから足を運んでいたのは事実だった。
でも、それを白瀬さんに話すのはなんだか嫌で、恥ずかしくて。だから僕は誤魔化した。
｢イ、イワナイホウコウデ｣
｢そ。｣
それだけ言って、白瀬さんはブランコをゆるく漕ぎはじめる。油をさしていないのか、キィキィ音をたてていた。
そこで、｢あ。｣と思い出したようにたずねられる。
｢ねぇ、なんで爆豪くんにデクって呼ばれてるの｣
名前に1文字もかすっていないのに、と白瀬さんは不思議そうに(気がするだけ)首を傾げる。
｢あぁそれは、"木偶の坊のデク"からきてるんだよ｣
｢へぇ、爆豪くんは妙なネーミングセンスの持ち主なのね｣
妙な、の部分に少し笑ってしまう。
｢うん、僕もそう思うよ｣
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続く (更新停止中)
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作者名：あんドーナツ | 作成日時：2021年6月17日 7時
