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衣装を変えていると、すぐそばで神宮寺さんが大笑いする声がした。カーテン1枚で区切られているだけなので、思わず肩を揺らしてしまう。なんとなく耳を済ませてみると、話し声は二つあった。







「もう引退するのかと思ってたわ!」




「ちょっと風邪こじらせてただけやって、」




「それならよかった。大袈裟なんだよ、お前のマネージャー。俺への伝え方死にそうな感じだったわ。」








足がすくんだ。わたしも知り合いなら出ていって話そうかと思っていたが、知り合いにも程がありすぎて、胸がきゅっとなった。たしかに彼は入院中という報道をされていた。








「…あ、Aちゃんいるよ。会ってけば?」




「………会わす顔、ないわ、」




「なんでよ。喧嘩別れだったワケ?」







困った顔をしているのが見えていなくてもわかる。靴で地面をトントンと鳴らすのは、焦ったり困ったりしてる時の癖だって、付き合ってから知った。








「……俺が、悪いねん全部。」








もうやめてって心の中では叫べるのに、そんなこと言えない自分はなんて小心者なんだろう。これ以上彼が話し続けたら、また彼は自分を責めるくせに。









「お互いちょっと忙しすぎたんや、会えないし話せないし。会うのも、撮られたら嫌だから、面倒なるし。……そんなん会えないことよりずっといいのに、俺は若すぎて、キツいこと言ってしまった。…別れた方がいい、なんて、…生意気なことも。」






「……Aちゃんは、大人だから、受け入れてしまったんだね?」






「…うん。今思えばあほすぎやし、下手なことしたなってわかる。」









わたしはいつの間にか頬に涙をこぼしていて、メイクが崩れないちゃいけないって、必死で止めようとしても駄目だった。だって、嫌われたとしか思っていなかったから、そんなこと思ってるなんて、知らなくて。









その時、スタッフさんがわたしを呼ぶ声がして、一生懸命にティッシュでそれを拭くけれど、すぐに開けるよと呼びかけられ、中途半端な返事を了承と捉えられてしまった。カーテンが勢いよく開くと、こちらを見る二人とバッチリ目が合う。



神宮寺さんはわたしの赤くなった目を見てギョッとしていたが、彼は少し驚いたあと哀しそうな顔をした。






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ささら(プロフ) - ドレミさん» 楽しんでいただけて嬉しいです、!ぜひ最後までよろしくお願いします^_^ (2020年5月5日 20時) (レス) id: 2c41b8cfc0 (このIDを非表示/違反報告)
ドレミ(プロフ) - 廉くんが好きだけどやっぱり優し過ぎる神宮寺くんも捨てきれない!!どうしよう!と、この作品を読む度に妄想してしまいます。これからも更新楽しみにしております! (2020年5月3日 21時) (レス) id: 1205e7c587 (このIDを非表示/違反報告)
ささら(プロフ) - あずさん» 有難いお言葉です、、本当にありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いのほどよろしくお願いします!!! (2020年4月9日 21時) (レス) id: 2c41b8cfc0 (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - 設定がとても好きです。もっと評価されるべき作品だと個人的に思っています。続きも楽しみにしています! (2020年4月7日 0時) (レス) id: fe82437d4e (このIDを非表示/違反報告)
ささら(プロフ) - renna0123yuさん» ありがとうございます!!!!(><) (2020年3月14日 11時) (レス) id: 2c41b8cfc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ささら | 作成日時:2020年3月10日 20時

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