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両親が離婚して、母が自 殺、父が病気で亡くなってから、彼の存在は知った。父の転勤先にいた龍斗を、葬式で初めて見た時ひどく不安そうで今にも泣きそうな顔をしていた。そうしたら、わたしが守るんだって本能的に感じて、気付いたら隣にいた。お互い顔も見た事がなかったのにどこかでやっぱり繋がっていたんだと思う。わたしたちはずっと一緒で、これからもそうだって思ってた。なのに、わたしは今龍斗のことが信じられなくて、全く知らない人のように感じてしまうのだ。
久しぶりの自宅。合鍵を回して扉を開けると、音に気付いたのか中からパタパタと足音がして、目の前に彼は現れた。
「…心配した。」
『ただいま。LINEしたよ、』
外泊の許可はとったはずなのに、と思っていると彼は私の腕を引いて胸の中に閉じ込められた。
「…そういうことじゃない。」
『……ごめんね。…話したいことあるから。』
「……ん、わかった。」
食卓にはいつもどおりご飯が用意されていて、いつ帰ってくるかわからないわたしの分も準備してくれていたことを想像すると、少し胸が痛くなった。席に着くと彼はお茶とお味噌汁を持ってきて、向かいに座った。
「お腹減ってる?」
『…うん、普通に』
「それならよかった。」
あまりに何気ない空気感がまた流れる。
『…あのさ、』
「ん?」
『……神宮寺さんとは、どこで知り合ったの?』
彼の手がピタリと止まる。表情こそ読めないものの、長年一緒にいれば焦っていることくらいわかる。やっぱり龍斗が全部したんだ。なんとなく受け入れきれてなかった現実が今目の前にあって、言葉が出なくなる。
「……なんの、こと?」
『もう、隠さないで…?
……神宮寺さんから、龍斗が言った、って聞いた。』
「…………………なんで、…言うかなぁ……」
え、と声を漏らすと龍斗はいつの間にか立ち上がっていて、わたしのすぐ隣にまで来ていた。頬を両手で包み込まれて顔を背けられずにいると、龍斗がかなしい顔をしていた。
「…失望、した?…嫌いになった?」
『……………お姉ちゃんは、かなしい。』
「…俺は………姉弟って思ったこと一度もないよ。」
龍斗の顔が近付いてくる。ドラマみたいにスローモーションに感じるのに、逃げられなくて避けられなくて。わたしたちの心の中で、何かが音を立てて崩れた気がした。
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ささら(プロフ) - ドレミさん» 楽しんでいただけて嬉しいです、!ぜひ最後までよろしくお願いします^_^ (2020年5月5日 20時) (レス) id: 2c41b8cfc0 (このIDを非表示/違反報告)
ドレミ(プロフ) - 廉くんが好きだけどやっぱり優し過ぎる神宮寺くんも捨てきれない!!どうしよう!と、この作品を読む度に妄想してしまいます。これからも更新楽しみにしております! (2020年5月3日 21時) (レス) id: 1205e7c587 (このIDを非表示/違反報告)
ささら(プロフ) - あずさん» 有難いお言葉です、、本当にありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いのほどよろしくお願いします!!! (2020年4月9日 21時) (レス) id: 2c41b8cfc0 (このIDを非表示/違反報告)
あず(プロフ) - 設定がとても好きです。もっと評価されるべき作品だと個人的に思っています。続きも楽しみにしています! (2020年4月7日 0時) (レス) id: fe82437d4e (このIDを非表示/違反報告)
ささら(プロフ) - renna0123yuさん» ありがとうございます!!!!(><) (2020年3月14日 11時) (レス) id: 2c41b8cfc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ささら | 作成日時:2020年3月10日 20時