水を向ける (ページ10)

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久々ページ10

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「 Aさん、中島さんから」

『ありがとうございます』

渡されたのは

中島卓也という文字と十一桁の数字と、何かのIDらしきものが書かれた紙だった

「中島さんが時間が空いたら連絡してほしいとのことです」

『分かりました』

私はあの日、卓さんに会ってからこのひつじの店で一日の大半を過ごすようになった

ひつじからお手伝いのシステムを説明され、簡単な仕事だと思っていてくださいと言われた

お給料もしっかりと出る

私の〝支えたい〟が主になる家政婦のような立場をひつじは選んだらしい

目的は〝特別な人〟探し

お手伝いも自分の仕事も両立している

仕事は栄養学やトレーナー系で、最近では利用者の食事管理とその日のメニューを決め、スケジュールをデータ化するのが多い

あれから一週間、あのお手伝いはしていない

卓さんのリハビリとかが重なってなかなかね

『よし、卓さんに連絡してみよ』

目の前に散らばる紙類やパソコンを片付け、緊張しながら携帯電話に数字を打ち込んだ

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「 ……はいもしもし中島です」

どこか懐かしい貴方の声を耳に感じた

卓さんの顔や背中、それに足を思い出す

『お久しぶりです卓さん、Aです』

『連絡させてもらいました』

「連絡ありがと」

「久しぶりにAちゃんの声聞いた」

少しクスッと笑ったのが電話の奥から聞こえた

「あのさ急なんだけど」

『は、はい』

「今から俺ん家行ける…？」

「俺、病院にいるけどまだかかりそうで……一人じゃ難しい家事を頼みたいんだけど」

『分かりました、掃除と洗濯ですかね？後、ご飯作って待ってます』

「ありがと、じゃあよろしくね」

電話しちゃった…

履歴に残る数字を見つめていた

いけない、用意しなきゃ

『ひつじさーん、今から卓さんの家行ってきます』

「久々のお手伝いですね」

「気をつけていってらっしゃい」

ひつじの声を背に私は卓さんの家へと向かった

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またあの人と会うとは知らずに