水を向ける (ページ14)

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・確信ページ14

医者の発言は予想していないものだった

「もう、君は野球をする事が出来ないと言ったらどうする？」

あぁ、俺はもう野球に関わっちゃいけないんだと確信した

その瞬間、涙と震えが止まらなくなった

「まだ、できないとは言っていない」

「手術をすればもう一度バットを握れる」

「しかし、失敗すれば一生歩くことだって難しくなる」

「卓也くん、どうするかね？」

俺はすぐに紙へサインをした

「よろしくお願いします」と言い、病院から出たその後から恐怖と焦りが襲ってきた

失敗したら、もう、あの大好きな野球を大好きな仲間たちと一緒にプレーする事が出来なくなる

どんな顔をして皆に会ったらいいのかすら分からなくなって怖くなって、また涙がでてくる

気づけばタクシーはマンションについていた

そういえば久しぶりにAちゃん、いるんだった

こんな暗い話、聞いてくれるかな…

松葉杖をつきながらエレベーターに乗り、長い廊下を一歩ずつ渡った

初めて自分の家のチャイムを押し、少しの間待つ

ドアが開くとそこには一番会いたかった人がいた

俺は松葉杖のことも足のことも忘れて彼女に抱きついた

そうしてから、弱音を吐いた

何ていわれるんだろうと思いながら、腕の力を強める

また怖くなった

『卓さんなら大丈夫です』

手術が失敗するかもしれないのに、大丈夫な理由もないはずなのに、俺はその言葉を聞いて安心した＿＿その言葉を彼女から待っていたのかもしれない

『私も遥輝も皆がいますから』

でも次の言葉に何で遥輝がいるのか理解が出来なかった

それも呼び捨てで

いつからそんなに親しい仲になっていたんだろう

また一つ不安が増えた

Aちゃんがどっかに行って消えてしまいそうで

遥輝のところへ行ってしまいそうで

俺のものでもないのに

だから泣きながら彼女を抱きしめ続けた

足なんか気にせず

このままずっとそうしていたかったが、誰かがそれを許してはくれなかった

Aちゃんは俺を支えながらリビングの椅子に座らしてくれた

すると慌てながら電話をかけ直す彼女の姿

相手が誰なのかは分からないが気になって、あいつに負けたくなくて、彼女の名前を呼んだ

「A？」

すると彼女は驚いたような照れたような顔をして笑った

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この瞬間

俺はAの事が好きなんだと確信した