水を向ける (ページ12)

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距離ページ12

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『はい、人いちAです』

『私の名前…なんで知ってるんですか？』

「え、あ、卓さんから色々と聞きました…」

戸惑った顔をしながら遥輝さんは急に敬語で話した

やっぱり目は合わない

「へぇAちゃんって言うんだ」

「でも、杉谷Aの方がもっと可愛く聞こえるよ」

「やかましいわ」

二人のやり取りを見ていたら少し笑ってしまった

杉谷拳士、強い

「あと、Aさんとの関係も聞いたよ」

卓さん、私との関係なんて言ったんだろう

とても気になってしまった

たかが家政婦なのに

それと同時に私は遥輝さんとの距離を感じていた

卓さんと一緒に居る時のあの気持ちとは違う、気持ちが私の中で何かしらの形になろうとしていた

『Aで大丈夫です』

『遥輝さんとすぎやですね』

「えぇ、俺すぎやって呼ばれるの」

『すぎやっていう雰囲気だったので』

出会ってすぐにあんな事されたら…

ね、すぎやってなるでしょ…

『拳士さんのほうがいいですか？』

「拳士でいいよっ」

また決め顔してる

「俺も呼び捨てでいいし、ためにしよに」

「ずりー、俺も俺も！」

『ありがと』

すごく嬉しい

二人共と打ち解けれることができ、連絡先まで教えてもらった

それに遥輝さんと今日はじめて目が合った

「どっちにしろAちゃんはフリーということで、俺が頂きまーす」

『拳士、初対面の人によく言えるね』

「全くほんとだよ…逆に尊敬するわ」

玄関で話が盛り上がっている中、ふと時計が目に入った

『あ、買い出し行ってご飯作らなきゃ』

「そういえば腹減ったな」

『よし、そこのお二人さん買い出し任せます』

買い物リストを差し出す

調子に乗っちゃったかな

「未来のお嫁さんのために行ってまいります！」

拳士はそう言いながら遥輝を引っ張って風のように出ていった

『ありがたい…』

私はその間に洗濯や掃除を済ませ、卓さんとあの二人を待っていた

その時誰かが訪れた時の音が聞こえた

ドアを開けるとそこには

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私が一番会いたかった人が

今にも泣き出しそうな顔で立っていた