吉良ヒロトに引き取られた。〈２〉 (ページ36)

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84話【母との再開】ページ36

女性は潤花の流している涙に、顔を伏せたが、
そのまま歩き出した。だが……

潤花「待って！」

潤花は女性の腕をがしっと掴んで、引き止めた。

女性「人違いじゃないかしら」
潤花「お母さんを見間違うわけないじゃない！
どうして？どうしてお母さんがここに……」

潤花の言葉を聞いて、女性もほんの少し涙を流した。

母「怜奈から、あなたが発表会に出るって事を、聞いて。顔だけ見てすぐ帰るつもりだったんだけど。ダメね。ずっと聞いていてしまったわ」
潤花「お母さん……私、ずっとお母さんに会いたかった」
母「…………華恋。私はあなたに謝らなくちゃならいない。ストレスであなたに暴力なんて……親として決して許されることではないわ。許して欲しいなんて思ってない。あなたがいなくなってから私の心がなくなった見たいな無心になる事が日常茶飯事みたいで………」
潤花「お母さん、私はまたお母さんと一緒に＿」
母「それはだめ」

母は潤花が何を言うとしたのか分かったようで、
潤花の言葉をふさいだ。

母「華恋は今とても幸せでしょ？私はあなたを
幸せには出来ない。だから＿＿」
潤花「幸せだよ！幸せだけど………幸せ……だけど」
母「それに私は今から警察署に行くの」
潤花「え＿＿」

潤花は驚愕した。
いきなり『警察署に行く』なんて、言われて
潤花は棒立ちに立っていた。

潤花「どういう…………意味？」
母「自首したの。子に暴力を奮っていたって事」
潤花「どうして！？私、今はもうそんな事！」
母「私はスッキリしたわ、華恋。だから、
もう行くわね。パトカーを待たしてるから」
潤花「待って！」

潤花は今までにないほどの涙を流して、母にこう告げた。

潤花「私に『愛してる』って言って。お母さんの口から言われたことないから」
母「………………………」
潤花「本当は嫌いでもいいから。『愛してる』
って聞きたい」
母「………………馬鹿ね」

すると、母は潤花を抱き寄せた。

母「“親が子供を愛さないわけないじゃない”。
大好きよ………『愛してる』」
潤花「ありがとう………お母さん」

母は潤花から身を離し、パトカーへと乗って
その場から姿を消した。

＊＊＊

『私も』とは伝えなかった潤花。
けれど、悔やんではいない。
この気持ちは必ず母に届いていると分かっていたから。

潤花は願っている。また、母と暮らせる日々を。

次回

最終章『潤花の人生』偏