吉良ヒロトに引き取られた。〈２〉 (ページ33)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:26,201 hit

81話ページ33

南沢はそう言い残して、潤花を追い抜かして行ってしまった。

潤花「プール……何年ぶ＿＿っ！」

潤花はある事を思い出して、顔を青ざめた。
そして自分の背中を見ようとするかのように、目を後ろにやった。

潤花(プール………なんて行けない……！)

＊＊＊

帰宅後。

南沢の家に電話したら、南沢はまだ帰っていなくて、電話に出たのは南沢の母だった。

南沢「華恋ちゃん！」

潤花はその名を呼ばれてすこし苦しかったが、南沢の母は幼い頃の潤花を知っている。そして潤花の事情も。

南沢「………元気にしてた？」
潤花「はい……とても」
南沢「そう…………あ、何か用事なのよね？」
潤花「はい、あのみなみさ……篤志君は？」
南沢「篤志ならまだ帰ってしないわ」
潤花「あ、そうですか……じゃあまた後で、かけ直します」
南沢「そう？分かったわ」
潤花「では失礼します」

潤花は電話を切ったあと、深いため息をついた。

潤花(言いにくいけど……断らないと。行けないって)

＊＊＊

夏休み。部活が終わり、潤花は寄り道をしていた

潤花「冷たいっ……」
水鳥「そら、アイスだからな」
葵「んん〜やっぱりこのアイス美味しい」

一緒に来ていたのは、水鳥、葵。それから天馬と信介。

信介「ねぇ天馬！一緒のアイス買ったんだから、どっちが先に食べられるか勝負しようよ！」
天馬「えぇーやだよぉ。頭痛くなるし」
信介「天馬僕に負けるのが怖いんだぁ」
天馬「なにぃ！ちがうよ！」

おなじみの会話を耳に入れながら、アイスを食べていた。

潤花「ごめんね、プール行けなくなって」
水鳥「気にするなよ！一緒に買いもんってのもいいしな！」
潤花「ありがとう」

潤花は少し微笑んだ後、少し遠くにある道路を
走っている赤い車を目で追った。すると、助手席に座っていた人が潤花に気づき軽く手を振った。

潤花「…………………」

潤花は少し嬉しそうに手を振り返した。

葵「誰に手を振ったんですか？」
潤花「あ…えっと………ないしょ」

潤花はすこし照れながら、葵に行った。