吉良ヒロトに引き取られた。〈２〉 (ページ30)

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78話~母の願い~ ページ30

カナデ「コンクールってなに？」
潤花「えっとぉ……私にとっては今までの練習してきた成果をお母さ＿＿」

潤花はそこで口を閉ざした。

潤花(もう、私のピアノを聞いてくれる人なんて………)

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お風呂に入って、潤花は今日習った事を復習していた。

潤花「今日は霧野君、風邪で休んでいたな……明日は来るかな」

そんな事を考えながら、潤花はシャーペンをノートの上で走らせている。

すると、ドアをノックする音が聞こえた。

怜奈「潤花様、私です」

潤花はカナデに隠れるよう言った後、怜奈を部屋へと招いた。

潤花「ど、どうぞ」
怜奈「失礼します」

怜奈は一礼したあと、部屋へと入ってきた。

潤花「どうかしましたか？」
怜奈「洗濯物をお持ちしました」
潤花「あ、ありがとうございます」

潤花はすぐに椅子から立ち上がり、洗濯物を受け取った。

怜奈「お勉強中でしたか？すみせん」
潤花「あ、いえ。こんなの別に……」

謙遜した潤花を見て、怜奈はクスッと笑った。

潤花「……………あの」
怜奈「あ、申し訳ございません！」

怜奈は優しい表情で、笑った訳を話した。

怜奈「やっぱり、潤花様は姉の子供なんですね」
潤花「…………？」
怜奈「姉も今の潤花様と同じような反応をしていました。復習することをさも当然かのように………私、復習なんてそんなにする事なんてなかったもので………」

怜奈は懐かしそうな表情を浮かべて、潤花に話してあげた。

潤花「お母さんと……一緒……」
怜奈「はい。……あ、そういえばまだ、伝えていませんでしたね」
潤花「なにをですか？」

怜奈は目を細め言った。

怜奈「母は潤花様を……手放す前日、言っていました。"貴方を最後まで見てやれなくてごめん。誰かを好きになって結婚して、孫を見てみたかった。華恋が笑っているところをずっと、見ていたかった。母らしい事をしてやれなくてごめん。もし、こんな私が一つだけ願っていいのなら…………
『幸せに生きて死んでほしい』"と」

潤花はその言葉を聞いて、言葉を失った。
涙が溢れそうなのを懸命に堪えていた。
潤花は声を振り絞り、これまでずっと思っていた事を聞いた。

潤花「お母さんは………私が嫌いで捨てたんじゃなかったんですか？」
怜奈「あの人はそんな方ではありません！潤花様の事を、愛してらっしゃいます。きっと今も」

あの時はずっと思い込んでいた。

母に嫌われて、捨てられたのだと。