第４６話『要因』 ページ47
走り去ったサッチは乗組員全員にアイラの記憶が戻ったことを伝えた。
その後、船全体はお祭りムード一色へと変わっていった。
「心配したんだよ？」
「すみませんー♪」
ハルタはアイラの隣に座り、嬉しそうにアイラを見つめる。
アイラもアイラで、昔のような笑顔を浮かべながらカクテルを喉に流し込んだ。
「アイラ、本当に全部思い出したのか？」
「イゾウさんは疑い深いですねー♪」
「まあ……な」
ハルタとは反対側に腰掛けたイゾウは、日本酒の入った盃を傾けて再度アイラの方を見た。
とても絵になる……なんて考えながら、アイラもまたイゾウの方を見た。
「何が要因で思い出したんだ？」
「私にもよく分かりませんー♪……ただ、夢で……」
「夢？」
アイラの言葉を繰り返したのはハルタだ。
イゾウは死すがに聞いているが、ハルタは好奇心からかソワソワしていた。
「ええー♪夢で私に会ったんですー♪」
アイラは、夢で記憶をなくす前の自分と出会ってから、少しずつではあるが記憶を取り戻したと言う。
しかも、取り戻すのは決まって眠りについた直後らしく、そのためここ数日は眠りについていた日が多かったと言う。
「なるほどな」
「今は全部思い出したの？」
「はいー♪」
ハルタの問いかけに、アイラは嬉しそうに頷いた。
宴は夜が明けるギリギリまで行われた……。
「私が私であるために、私は私を奥底に隠そう。
私が受け入れてもらうにはそれしか道は残されていないから……」
未だ夜は明けぬ時間帯。
船員はみな、記憶を取り戻したアイラと、少しでも多く話したいと食堂に集まっていた。
そして、主役のアイラもまた、食堂から出る様子はなかった。
しかし、そんなアイラの部屋に一人、机上に置かれた日記を読み耽る人影があった。
「アイラ……お前やっぱり……」
人影は小さく呟くと部屋をあとにした。
「おいおいエース！どこに行ってた！」
「トイレだ！」
サッチの問いかけに、食堂へ入ってきたエースは元気よく答えた。
しかしエースは、「食事中だよぃ」とマルコに叱られ、肩を竦めて笑った。
続く (更新停止中)
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作者名：仁奈 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年10月17日 13時
