笑顔の花【ワンピース】 (ページ41)

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第４０話『晩酌』ページ41

ローから預かった日記は、確かにマルコでは開けられなかった。

「指紋認証ねぃ…………」

入浴中のアイラを待っている間、マルコはダイニングで晩酌をしていた。
向かいのキッチンに立つのはサッチだ。

「指紋ってあれだろ？この、手の……」

サッチは掌をマルコに向けて言う。
少し語尾が小さいのは、指紋というものを正しく理解していなかったからだろう。

「手というか指だよぃ」
「お、おう、そうか！」

サッチは少しだけ恥ずかしそうにすると、ワイングラスを磨き出した。

「にしても、指紋ってのは聞いたことはあるけどそれを使った鍵なんて見た事ねぇな」

サッチの呟きに、マルコも同意だった。
人は個人によって指紋や耳紋といった個性を兼ね備えている。
そしてそれは、絶対と言っていいほど同じ指紋を持つものはいない。
しかし、悪魔の実で己の姿を変えることのできるこの世界では、指紋などはあまり重要視されず、あくまでそういうものがあるという知識に過ぎなかった。
ましてや、それを何かの鍵にするなど、この世界ではありえるものではなかった。

「まあ、ありえなぃって決めつけるのは早計だよぃ」
「まあな。この広い大海原にもしかしたらそんな島が存在していてもおかしくは無い……か」

結局二人は、日記を眺めたままアイラが戻るまで静かに盃を傾けていた。