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「それは嬉しい話ですが、私はそんな育てる余裕もお金もないですし……」
「突然、
＿＿＿だから、週に1回スンミンを散歩がてらここに連れてきて。Aさんも休日のリフレッシュに散歩したら気持ちいいと思うよ。
出会った時からそうだったが、この人は他人を自分のペースに巻き込むのに秀でている。彼に乗せられるままに今、気づけば、スンミンを育てることが決まっていたのがその最たる証拠だ。
「下衆な話かもしれないけど、お金に困っている訳じゃないからね。スンミンが幸せに過ごしてくれたらそれでいいんだ。だからお代とかは何も気にしないで、彼の食料も来る時に受け取ればいいから。」
そうどんどん話を進めるバンさんに、ノーと言える訳もなく。
せっせと今日私が持ち帰るであろう荷物を袋に詰めている彼を横目に、肝心のスンミンの方はどうなのだろうと思った。バンさんの話を聞き、嬉しくなったものの百聞は一見にしかずというか。本当に私でいいのか、という意を込めた視線を向けると、座っている彼は上機嫌そうに足をぱたぱた、と動かしているだけだった。
負の感情を一切抱えていないだろう彼の姿を見ているうちにじわじわと私はこれからこの子と暮らすんだという実感が湧いてくる。
＿＿正直、少しだけ対話ができたあの瞬間にこの子を愛寵することができたらな、と思ったのは確かだった。ただ愛着が湧いたというより、"欲しい" と。彼の底知れない魅力の一端を目の当たりにして、あっという間に惹かれた私は確かにそう思ったのだ。
彼というこれ以上ない癒しを手に入れられるなんて、なんと幸せなことか。きちんとお世話してあげられるか心配ではあるが、彼のためとあらば鬱屈な気分になる仕事詰めの日々だって軽々乗り越えられる気がするし、漲る気力で定時退勤も夢じゃない。うん。頑張れそうだ。
一瞬、心の中で思い描いてみた幸せな未来が、すぐそこに現実として迫っていることに喜ばずにはいられなかった。
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作者名：not found | 作成日時：2024年3月15日 2時
