観用少年は彼女の夢を見るか (ページ4)

今日:31 hit、昨日:100 hit、合計:13,312 hit

. ページ4

︎

「あの、この子って…」

「観用少年(プランツ・ドール)って聞いたことあるかな？」

噂には、とぽつりと返し呆然とした。

いつの日かに何気なくつけて見ていたテレビ番組が、お目にかかれることはまずない、と断言していた人形が今、私の目の前にいる。

記憶が確かであれば、ほとんど人間のように活動できると言っていたはず。あの専門家がこの子を見たら興奮のあまり卒倒するのは間違いない。
そして実際に目にした私も、不明瞭な点だらけの展開に残業続きの疲れ切った頭は現実に追いついていなかった。

「ははっ、急で何が何やらだよね。良かったらお茶でも飲みながらこの子について聞いてくれると嬉しいな。」

落ち着きたいのは確かだったので、はい、と肯定の意を伝えると、また嬉しそうに微笑んでいる。この笑みが温かさの一因なのだろう。人形達一人一人に慈しみを持って接していそうだ、なんて勝手ながら思いつつ、厚意で引いてもらったダイニングの椅子に腰掛けた。

「良かったねスンミン、君もおいで。すっかり遅くなったけど食事にしよう。」

スンミンと呼ばれた彼が、ソファーから立ち上がり、とたとたと駆けてくる。人形が当たり前のように動くフィクションのような光景をまだ信じられず、こっそりテーブルの下で手の甲を強めに抓ってみるもちゃんと痛い。これは確かに現実である。

なんとも阿呆らしいことしているうちに私の反対側の椅子には、正面に観用少年(プランツ・ドール)の彼、その隣に店主が座っていた。

「紹介が遅くなってごめんね、僕はバンチャン。ここの店主をしてる。好きに呼んで構わないよ。そしてこの子はスンミン。僕の作った観用少年(プランツ・ドール)さ。」

「は、はじめまして。Aです。あの…作ったって、"名人" はもういないんじゃ……」

専門家は、こうも言っていた。
名人の称号を持った職人が丹精込めて育てあげた代物で完成まで膨大な時間を要することが高値の理由でもあるが、そもそもそんな高度な技術のある職人がいなくなったために、一度世間の目についた年代物の価値が跳ね上がっている、と。

もういなくなったとされていた名人と普通に会話していることも、今自分は夢を見ているんじゃないかという錯覚を加速させる。

「みんな言わないんじゃないかな。何よりもこの子達が大切だからね。"真っ当に" 愛してくれる人の元に行かないと、美しくいられないし。」

︎ ︎ ︎