愛をたったひとつだけ Ryosuke.y

10 ページ11

涼介が部屋に戻って1時間。彼はずっと部屋から出てこない。晩御飯の時もリビングに出てくる気配はなく、母さんもそれを全く気にも止めずに食事を進める。




ご飯食べないでどうするんだろう…今日だけならまだしも、明日も出てこなかったら。なんとなく不安になる。これから少なくとも一年はここで過ごして行くのに、ずっとこのままじゃ体が持たない。




食事を終えて涼介のいる和室に行ってみた。






「涼介…入っていい？」


少し控えめにノックをしてからそう告げる。



「A？いいよ」




戸を開けて中にはいるとそこには必要最低限のものしか置いていなかった。家にきた時も、私の部屋に置ける程のものしか持って来ていなかったことを思い出す。




「ご飯食べないの？」



涼介に向かって問いかける。ずっと携帯をいじっていた手を止めて、少し何かを考えたあとまた携帯をいじりながら




「今はいらない。お腹減ってなーいの」




ヘラヘラとおちゃらけてそう言ったあとに、ちゃんと食ってるから心配すんな？と加える。




私そんなに心配そうな顔してたのか…なんだか涼介のことになるといつも顔や態度に出てしまうのは気のせいだろうか。




私ばかり振り回されているような気がして、なぜか悔しい。



「それならいい…別に心配してきた訳じゃなくて、ちょっと気になったからだから！」



じゃあね、と言って部屋を出て行こうとしたその時。



腕を掴まれてそのまま引き寄せられた。

11→←9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す