半径１ｍ【ワートリ】 (ページ15)

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side 空閑

「お手柔らかに」という建前を合図に、おれは前方、つむり先輩の方へと飛び出した。

試合はこなみ先輩の時と同じ１０本勝負。
つむり先輩は、槍の人みたいな柄がある武器じゃなくて、こなみ先輩みたいな斧の武器でもない、形状がコロコロ変わるブレードを使っていた。
これが「スコーピオン」という名前なのは後から知ったことなのだが。

正面から斬り込むと左右に躱し、移動先に刃を向ければブレードで受ける。
向こうからはほとんど踏み込んで来ない。
様子見か、“そういう”戦法なのか。

こなみ先輩の自分が動き、攻めに傾く戦い方が「動」なら、つむり先輩の最小限の動きで、相手の攻撃を受けるか流すかする戦い方は「静」だ。
そのせいで、１本から得られる情報が少ない。

そして、燕が飛び立つように、一瞬で勝負を片す。

視界に影が差した。
気づいたときにはつむり先輩は上、おれの頭上にいて。
僅かに、頭へと手が触れた。

〈トリオン供給器官破損〉

全身から血が抜けたような、そんな感覚がした。

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