罪悪感 ページ10
.
そして結局、翌日から私はいつもより早めに仕事を切り上げることにしたのだった。
昨日のようにまた何か言われてしまえばきっと次こそ言い逃れはできないだろう。でも、今の私にはこうするしか他なかった。このちっぽけな頭では、それしか思いつかなかった。
こんなに助けて貰って、良くしてくれている啓悟さんに恩を仇で返すような行動を取っていることは分かっていた。それでも、私はこの気持ちを持ってしまっている限り、迂闊に彼の近くにいてはならない。
私にとっては違っても、彼にとってはただの先輩と後輩で、事務員。それだけの関係だと言い聞かせてみたけれど、思えば思うほど「所詮ただの先輩と後輩か……」なんていうめんどくさい感情が湧き上がってきてしまって、余計に負のループだった。
何も考えないようにしよう、そう思ってより目の前の仕事に集中するようにした。
だから、彼の異変に気付くことができなかったのかもしれない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
かちゃり、と事務所のドアが開いたのはちょうど今しがた私が終電を逃した頃の時刻だった。
その日は手違いがあって手を付けていた仕事が1から振り出し。そのせいで深夜まで事務所に残って仕事をせねばならなかった。
ちらほらとサイドキックさんたちがいるなかでカタカタとパソコンに向き合う。
もうこうなったらタクシー代払うのもめんどくさいし、このまま事務所に泊まろうか。そう考えていた。
控えめに開かれたドアの音に、誰かサイドキックさんが帰ってきたのだろうかと顔を上げる。と、そこにはフラフラとおぼつかない足取りのホークスさん。
いつも窓から帰るのに、珍しい。でもそれよりも様子がおかしい。
そのままソファになだれ込むようにして寝転んだホークスさんのそばに寄り、様子をみる。
はぁ、と短く息をはいている彼は、疲れていると言うよりはしんどそうという表情。
もしかして、と思って額に触れてみる。
『……ねつある』
「どうしたんですか？」
『ホークスさん、すごい熱です』
事務所に残っていた数人のサイドキックさんたちがわらわらと寄ってくる。
あー、最近仕事詰めだったもんなぁとか、季節の変わり目だからかなとか、色々言葉が飛び交う中で、私が避けずに今まで通り接していれば異変に気付けたかもしれないのに。なんていう、出しゃばった罪悪感が湧き出てくる。
『……あの、私もう仕事あらかた終わったのでホークスさん送っていきます』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柴イヌ - めちゃ好きです。第三者から見たらクッキリしてるのに2人の中ではもやもやふわふわした関係性なのすきです。これからも、作者さんのペースで更新されていくのを応援してます！ (2022年10月17日 21時) (
レス) @page19 id: b7226dfc37 (このIDを非表示/違反報告)
まむ(プロフ) - 芝之さん» はじめまして！そう言っていただけて本当に嬉しいですありがとうございます〜〜(;_;)！文字に起こすのがすごい下手くそでこの2人の距離感が上手く伝わっているのか不安だったので本当に嬉しいです…！ (2020年9月5日 14時) (レス) id: 6068faa803 (このIDを非表示/違反報告)
芝之 - 夢主ちゃんとの、硬いようで脆い関係が大好きです…！更新楽しみに待ってます、頑張ってください！ (2020年9月5日 11時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まむ | 作成日時：2020年9月2日 22時
