この温もりに ページ12
.
「……嫌だ」
『えっ？な、にが』
「最近ずっと、Aちゃんが遠くて、いやだ」
『……』
遠い。遠いの言うのは物理的な距離なのか、それとも。
「……邪魔はしたくないって思ってるけど、…Aちゃんと全然話せなくて、さみしい」
『啓悟さん……』
自分の勝手な事情で、そんなふうに思わせていたなんて。…今までにないぐらいの弱々しい声色で、まるで小さな子供のように私を後ろから抱きしめながら話す啓悟さんにとてつもない罪悪感と、それと同じぐらいの愛おしさを感じて、胸が締め付けられた。
振り返ろうと身動きを取ろうとするとそれを感じたのか、抱きしめてくる力を強める。
目の前の愛おしい人に体ごと向き合って、その頬に手を滑らせる。
『……ごめんなさい、啓悟さん』
「…」
『私の勝手な都合で、啓悟さんとお喋りすることができなくて。……ほんとに、ごめんなさい』
「…………もうせん？」
『…ん、もうせんよ』
しっかり黄土色の瞳を見つめてそうハッキリと口にした。自分自身にも言い聞かせるように。
……もう、これ以上彼を避けて気持ちを抑え込むのはやめよう。そう思った。
あんなに距離を置いていても、顔を見ないようにしていても、こうして引き戻されれば一瞬にしてぶり返して溢れ出そうになるこの気持ちは、私ひとりで忘れようとしたところでどうせ何も変わらないのだ。
約束しても尚、私を手放す様子が一切見られない啓悟さん。熱があるからか暖かい温もりに段々と瞼が降りてくる。
だめだめ、まだ、……
そんな抵抗も虚しく、心地いい温もりと、私をきつく抱きしめるちからづよさにどこか安心してしまい、私はとうとう意識を手放した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柴イヌ - めちゃ好きです。第三者から見たらクッキリしてるのに2人の中ではもやもやふわふわした関係性なのすきです。これからも、作者さんのペースで更新されていくのを応援してます！ (2022年10月17日 21時) (
レス) @page19 id: b7226dfc37 (このIDを非表示/違反報告)
まむ(プロフ) - 芝之さん» はじめまして！そう言っていただけて本当に嬉しいですありがとうございます〜〜(;_;)！文字に起こすのがすごい下手くそでこの2人の距離感が上手く伝わっているのか不安だったので本当に嬉しいです…！ (2020年9月5日 14時) (レス) id: 6068faa803 (このIDを非表示/違反報告)
芝之 - 夢主ちゃんとの、硬いようで脆い関係が大好きです…！更新楽しみに待ってます、頑張ってください！ (2020年9月5日 11時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まむ | 作成日時：2020年9月2日 22時
