どうして ページ2
.
落ち着いたBGMが流れる。
私は目の前に置かれた紅茶を見つめながら、目の前に座る男に告げた。
『別れてほしい』
何を言ってるんだ、こいつは。口にしなくても分かるような表情で、目を見開きこちらを見据える男に、今までありがとうとだけ言い、机に多すぎるであろうお金を置いてその席を立った。
浅香A、23歳。
数年前に親が離婚、他県の大学に行っていた私は卒業と共に生まれ育ったここ福岡に戻ってきたのである。
どんな男性とお付き合いしても、数ヶ月でお別れしてしまう。求められれば手も繋いだし、キスもしたし、それ以上もした。でも、きっとそこに私の気持ちなんてこれっぽっちもなかったのだと思う。
恋愛、向いてないのだろうか。いや、向いてないんだろうな。もうこのまま一生独り身でいる方が誰も傷つけなくて済むのではないか＿＿＿＿＿なんて思いながら店を出たところで、引き止められる。
「っ、待てよ！どういうことだよ！」
『…もうこのまま貴方とズルズル付き合うことはできない。本当にごめんなさい』
人通りの少ない場所にひっそりと佇むこのカフェは、見つけた頃から私のお気に入りの場所だった。だから、今日の待ち合わせも何の気なしにここにしたわけだけれど、逆にそれが今日は仇となってしまったようだ。
生憎ここには、私と目の前の男しかいない。
「俺、なんかしたか！？なんか嫌なところあったら直すから、だからっ……「Aちゃん、もう話終わった？」
ガシッと両肩を掴まれたところで、背後から聞き慣れた…………いや、 " 数年ほど前は、聞き慣れていた " 声。
「……は？オイ、誰だよお前」
「誰って、アンタこそ誰です？俺の彼女になんか用ですか？」
「………………ぇ、は？」
「行こうか、Aちゃん」
唖然とした顔の男に、一方的に話を終わらせて私の手を握り歩き出すのは、何度も何度も忘れようとして忘れることの出来なかった、その人。
『け、いご、さん……』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柴イヌ - めちゃ好きです。第三者から見たらクッキリしてるのに2人の中ではもやもやふわふわした関係性なのすきです。これからも、作者さんのペースで更新されていくのを応援してます！ (2022年10月17日 21時) (
レス) @page19 id: b7226dfc37 (このIDを非表示/違反報告)
まむ(プロフ) - 芝之さん» はじめまして！そう言っていただけて本当に嬉しいですありがとうございます〜〜(;_;)！文字に起こすのがすごい下手くそでこの2人の距離感が上手く伝わっているのか不安だったので本当に嬉しいです…！ (2020年9月5日 14時) (レス) id: 6068faa803 (このIDを非表示/違反報告)
芝之 - 夢主ちゃんとの、硬いようで脆い関係が大好きです…！更新楽しみに待ってます、頑張ってください！ (2020年9月5日 11時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まむ | 作成日時：2020年9月2日 22時
