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何も考えられなくなって、私の手を引いてどんどん歩いていく田中に身を任せていた。
止まらない涙を拭う気力さえもなくて、ただ流れる涙がブラウスの襟を濡らしていくのを感じていた。
気がついたら、どこかの公園に着いてベンチに腰を掛けようとしていて、それからここが私の家の近くの公園だと気がつくのに、そう時間はかからなかった。
田中も、私が腰を掛けたベンチに座る。
そのまま私の方を向いて、ゴツゴツした細い指で私の濡れた頬を拭った。
そして、頭を優しく撫でながら、言う。
「大丈夫、俺がいるから。
だから、もう前みたいに自分を追い詰めんなよ」
「…ほんとにごめん。」
「いーの、榎本は黙って甘えてなさい。」
二カッと得意の笑顔をみせて、「飲み物買ってくる」と立ち上がり自販機の方に歩いていった。
目があったとき、驚いていた優吾は何を思ったんだろう。焦り?めんどくさく思ったかな?…もう分からない。
けどそれよりも、間近で後輩のこといるところを見てしまったからか、想像以上のダメージをくらっていて。
「はい、暑いから炭酸。」
「わ、ありがとう。」
渡された、冷たい炭酸飲料。
その田中の優しさが、いつも以上に傷ついた自分に染みて、また泣きそうになった。
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作者名:飴宮 | 作成日時:2022年5月12日 18時