#7 ページ7
.
真っ白で綺麗な肌は擦り傷と流れた血で汚れている。
目を離すまいとじっと私を見つめる細められた目から一筋、涙が流れた。
「A、大好きだよ」
「…っ、」
そんな、言い残すみたいなことやめて
「いえば、よかったね、ちゃんと…ごめんね」
「ううん、っいいよ、いいから、元気になったらたくさん言って、？」
「…」
ゆっくりと大我の目が閉じる。そして体の力が抜けたように、私にもたれかかった。
なぜか、それ以上言葉が出なかった。
大我がもう二度と会えない場所へ行ってしまう、そんな予感がしていたのに。それが気の所為で済まないことだって、何となくわかっていたはずなのに。
その後病院に運ばれ手術が行われたが、担当医は手術室からでてきて要因をつらつらと述べたあと、深く頭を下げて戻っていった。
大我は、あの瞬間に息を引き取った。
涙が止まらなかった。彼の両親にひたすら謝罪を叫んで自分のせいだと頭を下げた。
誰もいない家に帰り、玄関で靴を脱いだ途端に気を失ったかのように廊下に倒れ込んで。そしてそのまま、意識がゆっくりと遠のいていくのをじっと待った。
一瞬の出来事にも思えてしまうほど、話を切り出してから彼が目を閉じるあの瞬間までがはやく感じた。
その一瞬の出来事のなかで彼から貰った言葉、優しい視線。
全て嘘だと言って欲しい。目が覚めたらただの夢だよって私の前で笑って欲しい。だって私は、彼にまだ好きも感謝も伝えきれていないんだから。
流れる涙と朧気になっていく意識。冷たい廊下の感触が体全体を冷やしていく。
このまま大我の元に行けたらいいのにって、涙を流しながらそれしか考えられなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 840人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：飴宮
| 作成日時：2024年2月21日 17時
