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「つけるね」
「うん、でも大我がもってるのつけなよ」
「こっちのほうが大事」
「うん、ありがとう、でも」
…これは、なかなかに面倒なプレゼントをしてしまったかもしれない。
これじゃあ大我に気を遣わせてしまう。自分が選んだもののほうが、きっとずっと使いやすいだろうに。
「…じゃあ、」
「うん？」
「今日貸したの、Aにあげる。」
「え、え？」
いらないか、と苦笑した大我。いや、そこじゃなくて。
一周目だったら絶対に起こらなかったであろう出来事が起こったから、正直すごく驚いてしまったってだけ。
嬉しい、すごく嬉しい。
「もらう」
「ほんと？」
「うん、もらっていいの？」
「もちろん」
ずっと寒い中外にいて、急に暖かい家に帰ってきたからかな。すごく頭がふわふわして、会話も覚束なくて。へんな感じ、で。
鼻が赤い大我。…私がマフラーと手袋奪っちゃったから。
「コーヒー飲んで。寒かったでしょ」
「うん、ありがと」
畳んだ大我のマフラーに触れる。
…もう、私の。この大我にもらったマフラー、私がこれから使えるんだ。
頬がだらしなく緩んで、幸せで。
「もう帰るね。」
コーヒーを飲み終えた大我は、私があげたマフラーを巻いて自分の手袋をして、イヤーカフの入った袋を抱えて、家を出る準備をした。
もう帰るの？なんてわがままは心に留めておく。
また変に積極的になっても失敗がこわいし、しばらくはこのままで。ゆっくり変わっていけばいい。焦らなくていい。だってまだ時間はあるんだから。
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作者名：飴宮
| 作成日時：2024年2月21日 17時
