#127 ページ27
.
そして夏未が、笑顔で私に近づいてきた。
優しい顔で私を抱きしめて、トントンと背中を擦る。
「私、Aには幸せになってほしい。」
「…」
「その相手がAを散々傷つけた田中っていうのは、まあ…、親友としてちょっと癪だけどね。」
「…うん笑」
「でも、私はAの好きな人と幸せになってほしいの。それが一番でしょ？」
ちゃんと話しておいで、と目を見て言われて、やっと落ち着いた涙がまた流れる。
もう今日泣きすぎだ。優しくて大好きな皆のせい。皆の優しさのせい。
「あいつが彼女いるとか言い出したときは、『お前なんかこっちからお断りだよ』って言ってやれ。」
「ねえ笑」
「A可愛いんだから、男なんぞいくらでもいるわ。」
ね！って濡れた頬を拭われて、私もだんだん笑顔になった。
”樹も話したいことがきっとあるはずだから。”
”樹はさ、いつもAちゃんの話ばっかりでね笑”
”二人は幸せになってほしいから。”
”やっと付き合えたのに、樹くんはAちゃんのことばっかりで。”
”樹くんの気持ち的なことがあるから、言えないこともあるんだけど…”
『大丈夫だよ、きっと。』
『え…？』
『きっと、誤解が解けるから。』
ちょっとまって。なら、それじゃあ、樹は、
「A！？」
「…じゅり、」
教室のドアのところには、ネクタイを緩めて汗を滲ませた樹が私の方だけを見ていた。
涙が、止まらない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1852人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：飴宮
| 作成日時：2022年9月11日 17時
