桜が降る夜は３ (ページ20)

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「ご、っごめ、」

「…大丈夫、大丈夫だから。」

樹の顔をこんなに近くで見たのは久しぶりで、耐えていた涙が一気に流れた。

どんなに止まれって思っても、止まらない。

背中を擦ってくれている樹と、もう会えなくなって、連絡も取れなくなって、そして何年後かにあえてもきっと今まで通りに接することなんてできないだろう。

少し時間が経って、高ぶっていた感情もだんだんと落ち着いてきた。

「ごめん、もう大丈夫。」

「そ？」

頬が濡れたまま、やっと決心がついて、樹の方に向き直った。

相変わらずほんとに綺麗な顔。それも含めて全部全部、大好きだった。

「私ね、大学決まって。東京で一人暮らしするの。」

「…え」

「だから、樹とはもう会えなくなると思う。」

簡単に戻ってこられる距離じゃない。

それに、樹とはもう会うつもりはないから。これで最後。

「最後に言っておきたいことがあったから、今日呼んだの。」

「…」

驚いているのか、呆然とした表情の樹。

寂しいって、思ってくれてたりする？そうだったらもう、私すごく嬉しいよ。

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