恋人以上、 (ページ11)

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「すみません、急にこんな話…」

「いや…すごいな思いました、貴方はとても頑張ってる。」

「え？」

「尊敬します、俺はそんな頑張れない、踏ん張れないです……って、え！？俺、余計なこと言いました？」

驚いた、この人の言葉ってすごい。

「分かります」なんて変に共感するわけでもなく、「お疲れさまです」なんて誰目線かもわからない
ような言葉をかけるわけでもなく。

「頑張ってる」ってそれだけ。

その言葉が欲しかったのかもしれない、私は。

気づいたら流れていた涙を手の甲で雑に拭って、笑顔を見せた。

「ありがとうございます、すごく嬉しかった。」

「…でも、たまにはちょっと息抜きしましょう。」

「え？」

「これ、僕の電話番号です。」

そう言いながら差し出されたのは、名刺だった。

"松村北斗"と書かれた表面をひっくり返すと、11桁の番号がボールペンで書かれている。

「連絡は、してもしなくてもいいです。でも話ならいつでも聞くので。」

初対面の私にどうしてここまでしてくれるのか、不思議だったけど、この人が危ない人ではないっていうことがちゃんと分かる。

手元にある彼の名前と電話番号。

逆に私が危ない人だったら、どうしていたんだろう。

「電話、します。」

「そう、良かった。じゃあ、今日は帰りましょう。」

そう言って、駅前まで私を連れていき、タクシーを止めてお金を握らせ去っていってしまった。

住所を告げて、夜なのに明るい街を眺めながら、また私は涙を流した。でもそれはさっきとは違う、心の拠り所を見つけた安心感からの、涙だった。

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