漆ノ頁 司書さんの感情について ページ10
視点 徳田秋声
司書さんがお師さんに会った､と言っていたその日の夜｡
僕と中野先生は館長とネコに呼び出されていた｡
何でも､僕達に大事な話があるらしい｡
「 徳田です 」
「 中野です 」
「 嗚呼､入ってくれ 」
館長に促され､僕と中野先生は館長の部屋に入る｡
鍵を掛ける様に言われたので､しっかり施錠もした｡
「 いきなり呼び出して悪かったニャ 」
「 今日呼び出したのは､司書君について話しておくべき事があるからだ 」
館長とネコは何方も真剣そうな表情で口を開いた。
僕も中野先生も、その迫力に気圧されて口を閉ざしてしまった。
「 まず､司書君についてだ｡薄々気付いているとは思うが､彼女には' 感情 'が存在しない 」
「 … 薄々気付いていました｡司書さん､楽しいとか悲しいとか､言わない人だったので … 」
「 でも､何で僕達に ? 」
「 お前達が一番古参だったからだ｡吾輩としては他の文豪達に話しても良いと思っているがニャ 」
「 そこは君達二人に任せようと思う 」
結局は僕達の一存で他の人に話すか否か､決めて良いらしい｡
少し考えさせて欲しい､と館長とネコに話しておき､中野先生と館長の部屋を出る｡
先生と話し合いをした結果､他の先生にも話すべきだと言う事になり､その日は解散になった｡
「 … 僕に､何をしろって言うのさ 」
「 そりゃ､彼奴に感情を教えてやって欲しいんだよ 」
「 うわあっ !? い､いつからそこに居たんだ ! まず､誰だアンタは ! 」
独り言を聞かれたのはまだ良い｡
でも､突然隣に人が現れると誰でも驚くと思うんだ … !
暗くて顔まではよく見えないが､髪の長い女性と言う事は何となく分かった｡
女性は特に気にする様子も無く､僕の方をジッと見ていた｡
「 もし､彼奴が人並みに感情を手に入れられたら､私は必要無くなるんだけどな 」
そんな事を呟く女性の表情は見えないものの､声色は何処か寂しそうに聞こえた｡
その言葉の意味を問おうと口を開くも､女性はいつの間にか煙の様に消えていた｡
煙草の残り香を微かに残して､彼女の存在は消えていた｡
一体､あの女性は誰だったんだろう ?
モヤモヤした気持ちを抱えつつ､僕は自室に戻った｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
新美悠華＠文アル大好き💛 - おもしろいですこれからの投稿楽しみの極みですこれからも頑張って欲しいです (2023年3月17日 15時) (
レス) @page33 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星 廉 , | 作成日時：2017年12月18日 23時
