肆ノ頁 最悪な出会い 2 ページ7
視点 中野重治
武者さんが､多喜二を連れて来た｡
生前の一件から､多喜二の顔を見るのが気まずい｡
自然と視線が落ちていくのが分かって､辛くなった｡
司書さんにも心配を掛けてしまったのが情けなく思う｡
… 僕がちゃんと多喜二と向き合えていたら､司書さんはこんな風に怒らなかったのかも知れない｡
『 君が誰かは知らないけど､失礼じゃないか ? … 君に案内する部屋は無い｡ しげじに何かしたなら今直ぐ謝って｡ それまで､君を仲間とは認めない ! 』
多喜二の態度に痺れを切らしたのか､司書さんは多喜二の頬を平手で叩いて､大声で叫んだ｡
司書さんの目からは涙が溢れていて､司書さん自身も自分の出した大声に驚いて混乱している様にも見えた｡
「 司書さん ! 」
酷く混乱した様子で自室に戻ろうとする司書さんを引き止め様と声を上げるけど､司書さんの耳には入っていない様だった｡
司書さんを追い掛けようと武者さんに視線を向けようとした時､多喜二がふと視界に入った｡
叩かれた頬を抑え､何処か悲しそうに目を伏せた多喜二の姿｡
… そんな彼を､僕は放って置けなかった｡
「 多喜二､一緒に謝りに行こう ? 」
話し掛けるのは怖い､君に拒絶されるかも知れないから｡
目を合わせるのも怖い､君に逃げられるかも知れないから｡
でも､そんな悲しそうな君を放って置ける程､僕は腐っていないんだ｡
多喜二の顔を見上げ､手を取って司書さんの所に行こうと誘う｡
拒絶されても構わない､君を引き摺ってでも司書さんの元に行くって決めたから｡
多喜二は少し驚いた顔をしつつも､小さく頷いてくれた｡
二人で司書さんが駆けて行った方に向かうと､自室の直ぐ近くで司書さんが倒れていた｡
僕が声を掛けるよりも先に､多喜二が僕の傍を横切って司書さんに駆け寄っていた｡
「 司書サン､司書サン｡ … 気を失ってる｡ 重治､司書サンの部屋は何処 ? 」
何処か真剣な多喜二の表情｡
さっき君はその子に頬を叩かれたのに､君は何処までお人好しなんだい … ｡
口には出さず､司書さんを背中に背負う多喜二を司書さんの部屋に案内してあげた｡
これで少しは二人が和解してくれたら､嬉しいんだけどな｡
「 … ごめん､多喜二｡ 僕､またあっちに行かなきゃいけないんだけど … 司書さん､任せても良いかな ?」
助手として離れたくないけど､徳田君一人に任せるのも何か悪い｡
そんな中でも､多喜二が了承してくれたのを見て､僕は司書室を後にした｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
新美悠華＠文アル大好き💛 - おもしろいですこれからの投稿楽しみの極みですこれからも頑張って欲しいです (2023年3月17日 15時) (
レス) @page33 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星 廉 , | 作成日時：2017年12月18日 23時
