空っぽ司書ととある図書館の小さな家族 (ページ23)

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廿ノ頁雪合戦の出会いページ23

視点小林多喜二

『ええと､また白い本が出たみたい｡今回は雪国っぽいけど … 油断だけはしないでね』

朝､第一会派の全員は､司書サンに呼び出されて白い本の説明を受けた｡
今､俺達第一会派が潜書している書物､それはいつもの有碍書では無く､突如現れた白い本だった｡
見渡す限りの雪原｡
雪が珍しいのか､直哉サンははしゃいでいて､それを徳田さんが止めている｡
室生さんは､自然と触れ合うとか何とか言って､近くで座り込んで雪を触っている｡

勿論､侵食者もいる為､早々に潜書を終わらせたい｡
何しろ､本の中とは言え､寒いのだ｡
図書館の中も､今日は異例の寒さだったので､潜書前に予備の上着を司書サンに被せて来たが､寒さに弱い司書サンが心配だ｡
その心配が表に出ていたのか､気付けば侵食者の半分以上を倒していて､残りは最奥の強敵だけだった｡

「多喜二､今日はいつも以上に気合い入ってんな」

「 … 寒さに弱い司書サンが心配で､早く帰りたいだけですよ」

「ははっ ! 小林君､いつにも増して素直じゃないか ! 」

素直に気持ちを吐露すると､直哉サンと室生さんに揶揄われたが､今はそれどころではない｡
此奴を倒せば帰れる､俺の頭の中はその事でいっぱいだった｡

無事に敵を倒し終え､報酬等を受け取っている最中､誰かが此方を見ている事に気付いた｡
手慣れている室生さんにその場を任せ､俺が近寄って行くと､突然飛び付かれた｡
侵食者か､と身構えたが､人の形をしている｡
そして､俺の背中にしっかり腕を回している｡

「多喜二～ ! 会いたかったばい～ ! 」

「直､お前 … どうして此処に ? いや､その話は後だな｡直､俺の上着の中に入れ｡その格好は寒いだろ」

質問の前に､直の格好が問題だった｡
薄着で､冬場には全く向いていない服装｡
とにかく俺の上着の中に入れ､室生さん達の元に戻ると驚かれたが､連れて帰る事にした｡

「帰って来れたか､安心した」

無事に帰還出来た事に安堵する｡
直を降ろしてやり､目当ての人物を探すと､案外直ぐに見つかった｡

「 … ただいま､司書サン」

『おかえり､多喜二君｡新人､連れて来てくれたの ? 』

「おりゃあは徳永直たい ! 此処で働かせてくだはりー ! 」

『うん､大歓迎｡宜しくね､すにゃ君』

無事に直も迎え入れられ､雪合戦は幕を閉じた｡
芥川さん､久米さん､夏目さんが続き､連日歓迎会続きだが､司書サンが楽しいなら良いと思った｡