はなことば -2-【短編集】

ベゴニアの片想い ページ31

トット 多田智佑


side多田


「多田くん、おはよう」

多田「おはよ」

「今日はよろしくね」

Aは俺の同期。優しく清楚、おまけになんでも器用にこなすから、彼女を好いている人も多くいる。

かく言う俺もその1人だが、彼女と話すキッカケがなかなか見つからない。

「多田くんどうしよう!」

多「何したん?」

「小道具で使うティッシュの空箱持ってきたつもりだったんやけど…」

彼女の手には空箱ではなく、チップスターが3つ握られていた。

しかも全部味が違うし…ってそうじゃない。

多「どんな間違いしてんねん!」

「多分その時お腹空いてたんやろうな。毒味してくれへんか?…この赤いサラダ味」

多「毒味って言うな、味見って言え」

いつもなら挨拶だけで終わる会話が、今日は長く続いたし、清楚な彼女がここまで自由奔放だとは思わなかった。

ショックよりかは嬉しさが勝っている。

「ベゴニア置いてあるやん。綺麗やね」

多「ベゴニア?」

「ほらあそこ。…綺麗やね」

多「A、この花好きなん?」

「好きやで」

彼女はそれだけ言うと、メイクを始めた。

多「…早よ気づいてくれへんかな」

心が痛くて、キュってなって、苦しくて。

そんな俺の片想いを察してくれたのは、ベゴニアの花だけだった。



ベゴニアの花言葉「片想い」「愛の告白」

「親切」「幸福な日々」

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