はなことば -2-【短編集】

献身的なヘリオトロープ ページ14

ミキ 昂生


side昴生


ガチャ

「お帰り昂生!スーツと鞄預かるからお風呂入ってきな!」

昂生「そうするわ、明日6時入りやし…」

鞄とスーツを彼女に預けて風呂場へ向かう。

家に誰か待ってるの、なんかええな…。

(あと…あ、着替え!)

昂「…やっぱ風呂は後にする」

「え!?」

昂「なんか手伝うことない?」

「そうだな…。ない」

昂「ハッキリ言うたな!」

早くお風呂済ませなさい、と背中を押され、そのまま強制連行。

昂(疲れてるのはどっちや…)

Aも明日は入りの時間が早いはずだ。

それなのに、自分のことを後回しにしてバタバタと動いている。

昂「…A、上がったで」

「はやっ、まだ15分だよ!?」

昂「Aみたいに長風呂はせぇへん」

「はいはい」

夕飯の支度から洗濯物を畳むことから、休む間もなく動くA。

…ここは俺が、お兄ちゃん発揮して助けたろ。

昂「A、食器半分出すわ」

「いいの!?疲れてるから休んでていいのに…」

昂「たまには甘えてええんやで?」

「…ありがとう」

小さな声でもちゃんと聞こえた「ありがとう」の5文字。

気のせいか、彼女の顔がほんのりと赤い。

「昂生、突然お兄ちゃん発揮するのやめて!」

昂「ええやん、彼氏なんやし!」

「ありがとうな彼氏さん!」

昂「そこは昂生でええやろ!」

ヘリオトロープの花が、太陽に向かってまた背伸びをした。

───俺もAも、もっともっと背伸びせなアカンな。



ヘリオトロープの花言葉「献身的な愛」

「夢中」「熱望」

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