６ 開門前�� ページ14
壁外調査直前という一番大事な時期に失態を犯してしまった。
朝食をとっている間ウィルの頭の中はそのことでいっぱいだった。
それを気遣うように班員達は明るく食事を続けたが、良い雰囲気ではないのは明らかだった。
「あらら、機動班の皆さん緊張してるの？」
その雰囲気を壊すようにやってきたのはハンジ・ゾエだった。
常に能天気に見えるハンジだが、常に周りがよく見えているのも事実だ。
「ウィル、今日も緊張してるのか？」
「いつまでも壁外調査の前は弱いなぁ」
「でも結局、壁外に行っちゃえばいつもより頼れるんだけどねぇ」
一人でベラベラと話しているように見えるが、ハンジの言葉を聞いて班員たちの表情は柔らかくなっていった。
ハンジの意図を察したウィルは、
「やっぱり、この時間はいつまでも慣れないわ。」
と笑顔を見せた。
実際、ウィルが壁外調査の前に動揺する姿をハンジはあまり見たことがなかった。
珍しいウィルの姿にハンジの方が驚いたが、なんとかいつもの調子に戻るように努めた。
エルヴィンに呼ばれているとウィルを連れ出すと、ハンジは心配そうに声をかけた。
「らしくないけど、ウィル大丈夫？」
「…ちょっと上がっちゃった。落ち着かないと。」
落ち着こう、落ち着こうという気持ちと反比例するようにどんどん顔が固まっていくウィルにハンジは焦りを感じた。
「お、ウィル。お前、そんな顔してビビってんのか？」
鼻で笑うようにやってきたイザベルを見て、ウィルは笑みをこぼした。
「ビビってないよ。あなたこそ、巨人を見ておもらししないようにね。」
クスクスと笑って、冗談交じりに会話をする姿を見てハンジは安堵の笑みを零した。
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作者名：earthn | 作成日時：2019年8月5日 6時
