2*Kei ページ3
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時間が空いて手持無沙汰になると、必ず向かう場所がある。
独特の雰囲気が落ちつく。
時間の流れが心なしか穏やかに過ぎるのもいい。
喫茶店特有のコーヒーの香りが好みだ。
なんて、ここに通うようになってからコーヒーが飲めるようになった、ってだれに言っても信じてもらえなさそうだな、なんて想像してみる。
俺が通い詰めるここは、家族でのんびり経営しているカフェ&バーだった。
一見厳しそうな顔立ちでも笑顔がかわいらしいお父さんは主に料理を、お話し好きなふんわりとした雰囲気をまとうお母さんは主に接客を。
そして、花が咲くような笑顔と周りが明るくなるような真直ぐな性格をした一人娘さんは、ここの看板娘で料理も接客もこなす、皆から愛されるような子だった。
これほど把握できるくらい、通い詰めるこの場所は、俺が安心できる唯一の時間だといっても過言ではないと感じていた。
店員とその客の"幸せ"な感覚によって作りあげられているようなこの優しい空間が、普段の自分との違いを埋めてくれるようで安心できた。
カランカラン、
と扉が開く音がして、そちらに目を向ける。
ああ、もう終わりか
そう心の中でつぶやきながら、残りのぬるくなったコーヒーを飲みほした。
「ごちそうさまでした。」
いつも通りの挨拶に、いつも通りの金額。
それをレジにいるここの一人娘の店員さんに渡す。
「はい、いつもありがとうございます。
また、お待ちしております。」
いつも彼女が最後に見せる笑顔は、俺の暗い内面を照らしてくれるようだった。
「今日、お迎え早くなかったぁー?」
お店を出てすぐ、黒いスーツに身を包んだ大ちゃんにそう話しかけた。
「あーー、どうしても部下じゃ片がつかない件があって。」
「ふーーん。…おっけーい、俺が行くよ。」
「はは、なんだかんだ言って、ちゃんにしか頼れないからなー。」
「もーー、大ちゃんあてにしてんだかんねー。」
「…おう。あ、ほら、もう車着くから、大ちゃんはダメ。」
「はーい。…それを言うなら、大貴も敬語。」
また、今日も仕事が始まる。
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作者名:とまねこ | 作成日時:2020年5月24日 3時