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「今、なんて─…」
五条さんがいつもと違う様子を見せた
動揺している様な、驚いている様な中間の感情だった
"夏油"という言葉に反応しているのか、はたまた、この名前が気に食わなかったのか
「…お気に召しませんでしたか…?」
「いや違うよ、A、今─
『ごめんね、そこのお兄さんとお嬢さん』
「っ?!」
五条さんが何かを言いかけた時背後から声をかけられて、心臓に呼応して肩もビクリと飛び跳ねた
振り向くと警察官が二名ほど、張り付く程の笑顔で五条さんの肩に手を置いている
「どうかしましたか?」
五条さんは声色を変えて、何時もの話し方も一変させて、まるで別人の様に警察官に接し始めた
『いや、今捜査をしててですね。この前の殺人事件で指名手配犯になった男が逃亡中で。駅とかに紛れ込みやすいから片っ端から、呼び掛けをしてるんだよ』
『それにお兄さん、背高いから目立っててね』
この人…五条さん…というか厳密に言うと長身という理由で犯人だと目星を付けてる…?
まぁ確かに五条さん位の背の高さは、あまり見た事ないし…
厚底も履いてないのにこの高さ、それは目立つ
「よく言われます、背が高いと色々大変でして…」
『少し失礼な事を申しますと、犯人も丁度貴方と同じ位の背丈をしていてですね。白髪で異質な雰囲気のある男なんですが純日本人なんですよ』
『疑っている訳ではないんですが、万が一男が変装している可能性もありますので、ボディチェックの方をさせて頂いても宜しいでしょうかね』
「はい、構いません。捜査の役に立てるなら」
『助かります。ではあちらの方に』
一人の警察官は五条さんを交番の中に連れていった
もう一人の警察官と私は交番の前で事が終わるのを待っている
『君は、あの人の彼女さん?』
彼女…
そうですと答えた方が良いかな
でも逆にそれ以外の関係性だったら何だ…?
身内?親戚?妹?従兄妹?
「…妹です」
『へぇ、妹さんなんだ。物騒だよね、あんな事件が起きるなんて。怖いでしょう?』
「一人留守番が怖くて、たまたま休暇中だった兄と外出に」
『成程ね』
一言一言ずつに間が空く
この間がどうしようもなく不安を煽る
五条さんのボディチェック、まだ終わらないのかな
少し離されただけで、独りになった気がして
孤独感に苛まれそうだ
『ボディチェック、終わりました』
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黒凛蝶(プロフ) - 玲奈さん» 閲覧、コメント有難う御座います!とても素敵なお言葉を本当に本当に有難う御座います…思わず泣きそうになってしまいました。背中を更に強く押されたような気がします。どうかこれからも何卒宜しくお願い致します! (2022年8月8日 23時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
玲奈(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話を書いて下さりありがとうございます!途中からほんとにドラマを見ている気がして…とゆうかこれはもうドラマ化すべきなのでは!?となりました 黒凛蝶様の書く小説は好きな作品が多くて嬉しいです!これからも応援してます! (2022年8月8日 4時) (レス) @page50 id: d602917972 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - うぇいさん» コメント、閲覧ありがとうございます!そう仰っていただき作者の目頭が熱くなりました…。読んで頂き本当本当に感謝です! (2022年1月6日 21時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
うぇい - とても素敵な作品。終盤の展開に目頭が熱くなった (2022年1月6日 19時) (レス) id: daba836190 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - おまるさん» コメント、閲覧ありがとうございます!おまるさんの楽しみとなれる作品を作れて作者は本望です…!今作は完結してしまいましたが、またの機会がございましたら何卒作者をよろしくお願い致します (2021年6月27日 1時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2021年4月16日 20時