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廃家に住んで数日が経った頃、五条さんが何かを読みふけっていたので、覗いてみる事にした
やけに写真の多い雑誌の様で、文庫本や書物の様な紙ではなく、カラーページに使われるツルツルとした表面のタイプ
へらへらとしている五条さんが真剣にそれを読んでいるから、迂闊に声は掛けられはしないが
一体どんなものなのかと好奇心が湧いた
自然を装って、さり気に横目で見てみよう
台所から出て、五条さんの前をささっと通り過ぎようとした時にふっと横を見た
そして全てを悟った
この人も、そういうのを読むのかと
せめて言っても官能小説位だとタカをくくっていたが、大々的にテーブルに広げて読むんだと
本当に迂闊に声を掛けられなくなった
「あ、A」
「う"…」
話しかけられたことへの驚きと、私の好奇心のせいで知らなくていいことを知ってしまった、五条さんのプライバシーに踏み入ってしまったという罪悪感に見舞われて、思わず反射的な声が出た
先程まで真剣だった五条さんの眼差しに、何時ものニヤつきが戻った
「なぁに、僕がこういうの見てる事に驚いてたの?」
小さく頷くと彼はくつくつと笑った
私は苦笑した
「僕が読むのはこういうタイプじゃなくて、官能小説位だと思ってたみたいだね」
本当にその通りで、五条さんへの勝手な偏見が彼によって読み解かれてしまった
「ま、読まないけど。安心してよ、僕はこの本自体に興味がある訳じゃないからさ」
「僕がこの本を真剣に読んでたら、君がどんな反応するのか見たくて。僕も好奇心だったんだよ」
「いくら、男女二人、共同生活を送ってるからといって大人の僕が、ましてや女子高生に手を出すなんてしたら、それこそ指名手配だけじゃなくなっちゃうからね」
「本当に変 態扱いされちゃう」と彼は言うが、手は出さずとも、まず私の反応を見る為とはいえあれをテーブルに広げて読むという時点で相当変 態な気がする
「でもコレ見てよ。って、見せちゃマズイか。この雑誌ね、そんな使い古されてないの。まだ買って数日経った感じ?独身だったらまずないね」
「実家暮らしか既婚者…ってとこか。奥さんや両親に見られたら色々大変だろうし」
「となると、あの家は除外だな」
またどこで入手したのか分からない地図を取りだし、付近の住宅にバツ印を書く
「長くこの家に滞在する訳にもいかないからね。完全包囲されちゃうし」
「僕も移動するまでには髪を染めようかな」
新しい計画が建てられた
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黒凛蝶(プロフ) - 玲奈さん» 閲覧、コメント有難う御座います!とても素敵なお言葉を本当に本当に有難う御座います…思わず泣きそうになってしまいました。背中を更に強く押されたような気がします。どうかこれからも何卒宜しくお願い致します! (2022年8月8日 23時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
玲奈(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話を書いて下さりありがとうございます!途中からほんとにドラマを見ている気がして…とゆうかこれはもうドラマ化すべきなのでは!?となりました 黒凛蝶様の書く小説は好きな作品が多くて嬉しいです!これからも応援してます! (2022年8月8日 4時) (レス) @page50 id: d602917972 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - うぇいさん» コメント、閲覧ありがとうございます!そう仰っていただき作者の目頭が熱くなりました…。読んで頂き本当本当に感謝です! (2022年1月6日 21時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
うぇい - とても素敵な作品。終盤の展開に目頭が熱くなった (2022年1月6日 19時) (レス) id: daba836190 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - おまるさん» コメント、閲覧ありがとうございます!おまるさんの楽しみとなれる作品を作れて作者は本望です…!今作は完結してしまいましたが、またの機会がございましたら何卒作者をよろしくお願い致します (2021年6月27日 1時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2021年4月16日 20時