指名手配犯と捨て子は手を取る。

・ ページ36

【Aです。未だに、五条さんが牢屋にいる事の実感がありません

何時もみたいに、河原や路地裏をふらついて

鼻歌を歌いながら帰って来る。そんな日々の記憶が私の中に鮮明に残っています

私が手紙を書いたのは、決意表明の為です

五条さん、私は弁護士にでもなって、必ず五条さんの冤罪を晴らします

学生時代の傷害事件については解決済みらしいので、触れませんが


五条さんの為に私は精一杯闘うつもりです


どうかお身体にお気をつけてお過ごしください



帰って来たら一緒にご飯が食べたいです


法廷で会いましょう、とか綴ってみたりします
沢山手紙も書きますので読んでいただけると幸いです

追伸

脱獄は御遠慮下さい

Aより】


「あは…っ、マジで？弁護士なってくれるの？」


Aが弁護士を選ぶ事を心の中である程度予測を立てていた計画犯な自分ではあるが
まさか本当に決意表明を認めてくるとは思わなかった

思わず自然と笑ってしまった
悪い意味で馬鹿にしてる訳じゃない、良い意味の馬鹿さがあって
最高に面白い


「一緒にご飯が食べたい、ねぇ…可愛い事書いてくれちゃってさ。同棲するつもりなのかな？」

「Aの手料理とか食べてみたい気はするけど…まぁでも傑の飯は美味かったから、ワンチャンあるか」

「法廷で会いましょう、って完全に某ドラマ、某アニメの台詞じゃん…文面で渡されちゃったよウケるね〜」


裁判なんて、恐らく大半の犯人が毛嫌うだろう
何故なら、自分の人生に終止符を打てる一つの関門だからだ

無期懲役、死刑判決、執行猶予付きの禁錮ウン年
無期懲役や死刑判決にもなると、人生放棄する人も出てくる

だから牢内で死ぬ奴もいる

自分の誤ちに気付き、償う決心のある奴と
反省の色無しの社会不適合者と呼ばれる奴

色んな輩がいる


判決を下されれば、泣き崩れる奴だって

それくらい、思った以上にシビアだ

シビアというか、相応の対価というか
まぁそこん所は難しいし例え難いけど


何より全員、裁判なんて心地の良いものではない
7割はそうなんじゃないかと僕は勝手に推測しているが


僕は今、その余りの3割に近い


裁判にワクワクしている自分がいる


子供が遊具を見つけた時の感情的なワクワク、ではなく
単純な探究心が渦巻いて、かえって楽しみになっている


Aが弁護士…僕の横で熱弁してくれるのかなぁ



早く迎えに来てよ


待ってるからさ

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す