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「いやぁ、君結構足速いんだね…成人した大人にはちょっとキツいよ、まぁ僕じゃなかったらの話だけど」
「五条さん、見つかるのは時間の問題です。車で逃亡するのが良策だと」
「そうだね、といってもその車が─…」
「あの車はダメですか?」
駐車場に停る車を指差すと五条さんは、軽く笑った
「君、犯罪行為に磨きがかかってきてるけど?」
「指名手配されてる人と一緒にいればそうなります」
「そうだね、高校時代は暴れ回って傷害事件起こしちゃった僕が居るからね。それに今は警察に追い回されてる」
「傷害事件起こしたのは初耳です」
「だから言ったでしょ、ヤンチャしてたって」
この人のヤンチャは事件ものなのだろうか
車の扉を手前に引くも、当たり前だが開くはずはない
遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえ、心を掻き立てた
けれどそんな焦燥感の中、心のどこかでこの状況にワクワクしている自分がいる
何故だろうか
凄く楽しく思えてしまう
雨に濡れて、服が肌に張り付いて
外気の風が冷たくて、肌を刺激するというのに
視界は雨でよく分からなくて、シャワーみたいに降り注いでいて
雨が降るとよく見る女の子は
前髪を気にしながら「最悪」と言って近くのカフェに寄り、友達と雨宿りをして時間を潰している姿を目にしていたが
もしかすると私も皆のような高校生活を送っていたら「最悪」と友達と言い合っていたのかもしれない
でも私はこの雨を、状況を
「最高」と言えるだろう
「ふふっ、」
「?」
「五条さん、これは、女子高生の青春に入りますか…!」
「!…極めて稀だけど、君が作り出した青春だ。だから、入るとも」
そう言うと五条さんは車の窓ガラスを割った
そこから中に入り、ドアを開けた
「鍵さしっぱとか、不用心だねぇ?指名手配犯がうろちょろしてるのに」
五条さんは鍵でエンジンを掛け、走行し始めた
サイレンの音は遠ざかり、引き離すことに成功した
「…助けられた。ありがとうね」
「私は、私の出来ることをしたまでです」
「助けたのはなんで?僕のことが好きだから?」
「はい、好きなので」
「大胆〜」
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黒凛蝶(プロフ) - 玲奈さん» 閲覧、コメント有難う御座います!とても素敵なお言葉を本当に本当に有難う御座います…思わず泣きそうになってしまいました。背中を更に強く押されたような気がします。どうかこれからも何卒宜しくお願い致します! (2022年8月8日 23時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
玲奈(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話を書いて下さりありがとうございます!途中からほんとにドラマを見ている気がして…とゆうかこれはもうドラマ化すべきなのでは!?となりました 黒凛蝶様の書く小説は好きな作品が多くて嬉しいです!これからも応援してます! (2022年8月8日 4時) (レス) @page50 id: d602917972 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - うぇいさん» コメント、閲覧ありがとうございます!そう仰っていただき作者の目頭が熱くなりました…。読んで頂き本当本当に感謝です! (2022年1月6日 21時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
うぇい - とても素敵な作品。終盤の展開に目頭が熱くなった (2022年1月6日 19時) (レス) id: daba836190 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - おまるさん» コメント、閲覧ありがとうございます!おまるさんの楽しみとなれる作品を作れて作者は本望です…!今作は完結してしまいましたが、またの機会がございましたら何卒作者をよろしくお願い致します (2021年6月27日 1時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2021年4月16日 20時