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「もう大丈夫なのよ、安心して」
私に話し掛ける警察官の後ろには
数人の警察が力任せに無理矢理五条さんをパトカーに押し込もうとしていた
「違う、あの人は、」
ふと五条さんと目が合った
五条さんは苦笑して「ごめんね」とそう言った気がした
その言葉に胸は張り裂けそうで、唇をぐっと噛んだ
私がこのまま大人しく人質として連行されたら、誰が五条さんの身の潔白を証明できるの?
あの人を知ってるのは私だけかもしれないのに
自意識過剰かもしれない、私だけが五条さんを知っているなんて烏滸がましい
それでも、あの人には傑さんの意志が託されている
傑さんの為にもここで足止めを食らう訳にはいかない
五条さんは既にパトカーに乗っている
手錠も着いているが、周りを囲っていた警察官は連絡をとっているようでバラバラだ
何より、パトカーの扉を閉めようとしている人が正に連絡の真っ只中
チャンスだと思った
手錠の鍵を持っているのも多分その人だろう
決意を固めた私は、警察官を振り切った
まさか人質に取られていた被害者が、警察官に牙を剥く等思ってもいなかったのか
案外簡単に肩を掴んでいた腕は取れた
私が犯人に手を貸した女子高生と報道され、世間から非難を浴びてもいい
私は私なりの方法で
五条さんを救いたい
「なっ─…?!」
「ごめんなさい、でも、私、人質じゃないの」
車のライトが雨粒を照らす
光の矢のようにそれは絶え間ないもので、私はその中を突っ切り五条さんの手を掴んだ
女性の警察官が掛ける声に警察官が集まるまでの時間は一瞬しかない
それにこの雨音だと声がくぐもって響きづらい
我ながらに計画犯の考えだ
五条さんのがうつったかな
扉を開けていた警察官はハッとして扉を閉めようとする
しかし既に私は扉の目の前
閉めようとした扉をこじ開け、その反動で扉は警察官の顎先にぶつかる
よろめいた警察官のウエストバッグから鍵が都合よく落とされた
そんな事があるのだろうかと内心びっくりしていたが、今はそこに気を取られている場合では無いと思い、五条さんの手錠の着いた手首を強く引っ張って走り出した
「逃げます」
「ははっ、随分積極的になったね」
「気のせいです」
「雨の中の逃亡劇といきますか」
「コンティニューモード、です」
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黒凛蝶(プロフ) - 玲奈さん» 閲覧、コメント有難う御座います!とても素敵なお言葉を本当に本当に有難う御座います…思わず泣きそうになってしまいました。背中を更に強く押されたような気がします。どうかこれからも何卒宜しくお願い致します! (2022年8月8日 23時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
玲奈(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話を書いて下さりありがとうございます!途中からほんとにドラマを見ている気がして…とゆうかこれはもうドラマ化すべきなのでは!?となりました 黒凛蝶様の書く小説は好きな作品が多くて嬉しいです!これからも応援してます! (2022年8月8日 4時) (レス) @page50 id: d602917972 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - うぇいさん» コメント、閲覧ありがとうございます!そう仰っていただき作者の目頭が熱くなりました…。読んで頂き本当本当に感謝です! (2022年1月6日 21時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
うぇい - とても素敵な作品。終盤の展開に目頭が熱くなった (2022年1月6日 19時) (レス) id: daba836190 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - おまるさん» コメント、閲覧ありがとうございます!おまるさんの楽しみとなれる作品を作れて作者は本望です…!今作は完結してしまいましたが、またの機会がございましたら何卒作者をよろしくお願い致します (2021年6月27日 1時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2021年4月16日 20時