指名手配犯と捨て子は手を取る。

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五条悟は考えていた
亡き友人から託された言葉の意味を

幾つもの仮説をたてるが、物的証拠もその言葉を選ぶ節も見受けられず頭を悩ませるばかりであった

悟、君が助けてあげて欲しい…？
一体僕が誰を助けるって言うんだ

隣で自分の歩幅に合わせて歩くAを見詰める
彼女が笑った時、どこか懐かしい思いに囚われた

ほんの少しだけ、傑の面影が見えた気がした
アイツは優しい奴だ
僕が会う度に、孤児院の話をしてくる

コンビニに行けば10円とかの小銭なら、レジ横の小さな募金箱に寄付して、親切心の塊みたいなやつだった

そうだ


もしかすると、孤児院の子供の誰かなんじゃないか？

考えがどんどん答えに近付いている気がしているのに、何故だか靄がある
近付くのは孤児院という答えじゃないのか…？


顎に手を当て、時折水平線に目を向けて
地面を見詰めてを繰り返しながら思考を巡らせる

傑を家族のような存在だと、1番親しみを込めてたAの事情を聞く必要もある


「Aは、会った時もそうだけど、両親も家もないの？」

「無くなりました、なので施設に」

「その施設にはさ、傑は来てたの？」

「…いえ、来てません」


「そうか…」

「何かわかりそうだったんですか？」

「そうだったけど、振り出しに戻ったみたい」


「傑は誰を助けたかったんだろう」


僕に任せるってことは、僕にも一度面識がある可能性が…

傑だって、顔も名前も知らない奴を僕に託す真似はしない

きっとお互いの接点があったから、それを理解している上で僕に…


僕にも傑にも接点がある誰か…


「案外、遠くじゃないのかもです」


「え？」


「灯台もと暗し、です。意識してないだけで、そういうのは身近にいるものです」


じっと目線を離すことなくこちらを見つめる大きな瞳は綺麗だけど
霧がかかっているようで、不思議な感覚だ


そんな考える時間も、ゆっくりと歩を進める余裕も

無くなってしまうことを、まだこの時は知らなかった

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