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「本当ですか…!」
思わず、五条さんの方に身をずいと乗り出す
五条さんはそれに驚き、身体を少し後ろに退いた
「ま、まぁうん…付き合うよ?嫌いじゃないし。でも、今じゃない」
「僕の謎解きと、君がもっと自由になる事。広い世界を知って、知識を増やして、それで僕のとこに来るんだ」
「大人になれなんて言わない。君にはまだ、若い内に経験出来ることをなるだけ経験しておいてほしいんだよ」
優しい声色で説き、私の頭にぽんと手を置いた
その言葉に応えるように私も小さく頷くと、五条さんは微笑んだ
「いやぁ、しかし変装ってバレないもんなのかなぁ」
五条さんはボソリと呟く
確かに言われてみればそうだ
ここ数週間もの間、白髪青眼という目立った元の容姿から黒髪黒眼になり
身長は仕方の無いものの、それなりに社会人感が出ている
出会った時の五条さんは、完全に異世界人だった
「Aはどっちのがタイプ?今と前の僕」
「両方です」
「なんか、やけに積極的になったね」
「いえ、五条さんが積極的になってたので」
「それってどういう意味?」
「抱き着く甘えるエトセトラです」
「大人の傷口を抉らないで〜それ黒歴史だよ」
私達は本当に警察に捕まらないのだろうか
このままどこまでも逃避行を続けられるのだろうか
ずっと、小さい頃から人間は一人で生きていかなければならないものだと思っていた
人という字が、人と人が支え合って─
そんな教えをよく耳にする
それが間違っているとは言わない
世間一般論として掲げられているだけで、捉え方は人それぞれだと感じる
でも現実はそんな支え合いが目に見える形にない
支え合うではなく、1人で立たされている
一人一人が自立して、そこに様々な意味を持つ
苦難の線や盾を課されていく
私も、五条さんもそうだと思っていた
特に五条さんは、立派な大人で自立している人間だと認識していたからだ
でも、もしかしたら多分、視点を変えたら違う
どんなに軸のある五条さんでも
一人で背負うのが疲れた時は
私に飛びついてきた時みたいに誰かの場所に身を置きたい時もあるのかもしれない
「……頼るのは悪くないことです」
「荷物が重いなら今いる二人で持てばいいんです。二人でも重かったら置いて休むか、荷台を引けばいいんです」
「何時でも飛びついてきてください」
「…!」
「ははっ、!…じゃあ、遠慮なく後で飛びつかせてもらおうかな?」
「スタンバイしてます」
「心強いね〜」
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黒凛蝶(プロフ) - 玲奈さん» 閲覧、コメント有難う御座います!とても素敵なお言葉を本当に本当に有難う御座います…思わず泣きそうになってしまいました。背中を更に強く押されたような気がします。どうかこれからも何卒宜しくお願い致します! (2022年8月8日 23時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
玲奈(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話を書いて下さりありがとうございます!途中からほんとにドラマを見ている気がして…とゆうかこれはもうドラマ化すべきなのでは!?となりました 黒凛蝶様の書く小説は好きな作品が多くて嬉しいです!これからも応援してます! (2022年8月8日 4時) (レス) @page50 id: d602917972 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - うぇいさん» コメント、閲覧ありがとうございます!そう仰っていただき作者の目頭が熱くなりました…。読んで頂き本当本当に感謝です! (2022年1月6日 21時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
うぇい - とても素敵な作品。終盤の展開に目頭が熱くなった (2022年1月6日 19時) (レス) id: daba836190 (このIDを非表示/違反報告)
黒凛蝶(プロフ) - おまるさん» コメント、閲覧ありがとうございます!おまるさんの楽しみとなれる作品を作れて作者は本望です…!今作は完結してしまいましたが、またの機会がございましたら何卒作者をよろしくお願い致します (2021年6月27日 1時) (レス) id: e6bcf3a4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2021年4月16日 20時